第10話:再びの傀魔。
その夜も神羅と阿加流姫は傀魔の匂いを追って、街に出た。
「また北東の方角か・・・」
「昔から魔物や妖怪の類は北東から来るって言いますからね」
方角に十二支を当てはめたとき、丑三つ時は「鬼門」にあたるから北東を指す。
鬼門という言葉が表すように古くから邪悪な鬼が出入りするとして忌み嫌われる
方角のことだ。
「今度は桜ヶ丘あたりだな・・・」
そう言ったかと思うと神羅と阿加流姫は桜ヶ丘に瞬時に飛んでいた。
ふたりが現れるとニ体のカイライが出現していて一匹はすでに 人間の肉を
食い終わったのか血だらけになった口の周りを舌なめずりしていた。
「遅かったか・・・くそっ」
もう一体は、すぐにでも、もう一人いた人間を襲おうとしていた。
阿加流姫は、その一体に瞬時に近づくと三日月丸の刃先が流れるように弧を描いた。
あっと言う間に一匹目の傀魔の首が跳ね飛んだ。
不意をつかれた傀魔は阿加流姫をみつけることなく倒された。
一般の刀や薙刀では傀魔の首は簡単には切り落とせない。
新器である三日月丸にして、それが可能なのだ。
「先手必勝」
そう言って阿加流姫は、すかさず肉を食らってゲブゲブ言っているカイライを
ふたたび三日月丸で薙ぎ払った。
だが三日月丸の切っ先は傀魔の体に傷を負わせるだけにとどまった。
阿加流姫の腕に衝撃が走った。
「ゲゲッ・・・きさま・・・ぐわお~っ・・」
傀魔は奇声をあげて阿加流姫に向かって来た。
傀魔の攻撃を交わそうと宙に舞った阿加流姫だったが、間に合わず傀魔
の繰り出した攻撃を食らって飛ばされた。
地面に落ちた阿加流姫は、そこにしゃがんだまますぐに三日月丸を構えた。
頭は無事だったが腹に痛みを感じた。
傀魔の攻撃は阿加流姫の腹に当たったようだった。
致命傷とはならなかったが呼吸が整わずすぐには立ち上がれずにいた。
それを見た神羅は新月丸を持って阿加流姫が倒れてる場所まで走った。
そして無我夢中で阿加流姫に襲いかかろうとしている傀魔の足を真横に
はらった。
傀魔の片脛から下が切断されて、そいつはバランスを崩して体ごと
もんどり打ってその場に倒れた。
頭から池面につっぷした傀魔は咆哮を上げて神羅をにらんだ。
「アカル、大丈夫か?」
「大丈夫です・・・これしき・・・」
「でも、あの傀魔の皮膚は固いです、三日月丸でも傷を負わせるだけでした」
「傀魔によっては三日月丸でも歯が立たないやつもいるようです」
「こんなこと初めてです」
「新月丸は切れたぞ」
「もしかしたら新月丸なら倒せるかもしれません」
「私に構わず行ってください」
「俺が倒すのか?」
「召喚士じゃ無理って言わなかったか?」
「それは昔の話・・・」
「召喚士の技量によっては倒すことも可能なのかもしれません」
「きっと神羅にはその力があるんだと思います」
そんなことをしている間に傀魔が足を引きずりながら再び迫ってきた。
「くそ~・・・食ってやる・・・食い殺してやるぞ・・・うぐぐぐう・・・」
時間が経てば傀魔の足が再生する。
そうならないうちに神羅は傀魔の突き出した腕を避けると新月丸を
思い切り振りきった。
大根でも切るように傀魔の腕はグバッと切り落とされた。
残った傀魔の腕から血が吹き出した。
「ぐえっ・・・小僧・・・きさま~・・・」
つづく。
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