第5話:一心同体。

「君が神様って・・・にわかに信じがたいな」


「正確には私は神様じゃなくて神霊です」


「そのことだけど、そう言うのって神話の世界のことだけだろ?」


「神も神霊も傀魔と同じで別次元に存在してるんです」

「他の世界から見れば人間もまた異界と言えるでしょう」

「それに、そもそもは人間も神が作りし者」


「神はそこにいて人間界に危害が及ばないよう私のような神霊を遣わして

人間を傀魔や魑魅魍魎のような化け物から守ってるんです」


「まるで、絵空事みたいだ・・・」


「実は神様の話では人間界にこそ傀魔を操ってる者がいて、私と同じ

ように傀魔も異界から召喚されてるって話ですよ・・・」

「傀魔が殺した人間の魂を食らって何千年も生き延びてる者、妖怪がいる

って話です」


「そうなんだ・・・じゃ〜そいつを倒さないと傀魔をいくら倒しても

終わらないってことだよね 」


「だけど今の所、傀魔の背後にいる者の正体が分かりません」

「ただ傀魔が召喚されるとしたら、かならず近くに傀魔を呼び出した者も

潜んでるってことでしょう?」


「たしかに・・・でも正体不明ならやっかいだね・・・」

「でも、人の魂が必要なら自分で直接手に入れたらいいじゃん」

「傀魔を使う必要なんてないと思うけど・・・」


「どこまでが本当か分かりませんが、恐怖を感じた魂のほうが傀魔を

操ってる者にとってはよりいいんじゃないでしょうか?」

「普通に人を殺したのでは、ダメなんでしょう」

「傀魔を見て恐怖を感じない人はいませんからね」

「おまけに傀魔が人を全部、食べてしまえば証拠も残りませんから」


「怖いこと言うね・・・」

「でも、それなら納得が行く気がする」

「傀魔と一緒に、そいつも見つけないとね」

「今のところ傀魔の動きがはっきり見えないようだから、しばらく様子を

見よう」

「もう時間も遅いし・・・話はまた明日・・・」


「アカルは帰らないんだったら、この部屋で寝て」

「僕は別の部屋で寝るから・・・」


「どうしてですか?・・・どうして別々の部屋なんです?」

「召喚士と神霊は一心同体・・・どんな時も一緒ですよ」


「そうなの?」

「君は女の子だから・・・俺が遠慮したほうがいいかと思って」


「お心遣い感謝します・・・でも遠慮なんかしなくていいです」

「あなたと私は、いつでもいなかる時も一緒にいなければ・・・」


「私がどうしても邪魔と言うなら帰りますけど・・・」

「必要と思った時は呼び出してくだされば・・・」


「いやいや帰らなくていいから、そう言う意味じゃなくて・・・神霊には

余計な配慮だったかな」


「そうです」

「それに万が一神霊が召喚士に嫌われるなんてあってはいけないことですから」 「常に意思の疎通は大切です」


「嫌うって・・・それどころか君がマッチョで不細工な化け物じゃなくて

よかったって喜んでるよ 」

「ゲームなんかで呼び出されるのは、そんなモンスターが多いから」


「ゲームと一緒にしないでください・・・」

「私が化け物って・・・ひどい」


「いやいや、アカルが化け物だって言ってるわけじゃないから」

「そんなふくれっ面してないで、機嫌直して・・・ほら」


(神霊なんて言うからさ、もっと威厳に満ちて近寄り難いのかと思ったら

まじ女子高生と変わんないじゃん)


「さ、遅いからもう寝よう」


「お先にどうぞ・・・」

「私は眠らないんですよ」

「起きていて召喚士が寝てる間も召喚士を守ってるんです」


「え〜寝不足にならない?」


「大丈夫ですよ・・私は神霊ですから・・・ですから私のことは気にしないで

神羅様は寝てください」


「神羅でいいよ、様はいらない」


「分かりました、神羅・・・」


「じゃ〜俺一人だから布団はひとつでいいか」

「なんか、横で座って見られてると思ったら寝づらいな」


「眠れないなら添い寝して差し上げましょうか?」


「え?神霊ってそんなことまでするの?」


「はい、召喚士と神霊は一心同体ですから・・・」


「添い寝なんてされたら通常の男なら余計眠れないだろ?」


つづく。

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