第5話 庭の縁側で


 それから一か月後、紫苑は事務所である町家の縁側に座っていた。

 縁側で紫苑は風を感じながら緑茶を啜る。


    *


 一か月前。

 あの墓地で、紫苑は固まっていた。

 椿に対して何もできない、結末が変わらないことを悟った紫苑は、己の無力に打ちひしがれていた。

 そんな紫苑に椿は言った。


「君に、こんなことお願いしていいかな?」

「何だ?」

「僕を、どこか静かな場所に埋めてほしい。どこでもいい、どこか、このマリーゴールドが咲いても良い場所に……」

 

    *


(望み通りだろうか……)


 紫苑は湯飲みを置き、庭に視線を落とす。

 自然があふれる庭の中心にはマリーゴールドの花畑が広がっている。


     了

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

花言葉探偵は笑わない 蘇芳  @suou1133

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ