第2話 振り返る~百合編~

 次に、紫苑は百合仮面の出来事について調べ直すことにした。

 紫苑が刺されたこともあって百合仮面の出来事については聴取をした警察官から大体の話を聞いていた。

 百合仮面のこと――小佐田三波おさだみなみは一年前にいじめを苦に自殺した女子中学生――高遠水月たかとうみつきの大親友だった。水月がいじめで死んだことを知った三波はいじめた三人に復讐した。頭蓋骨は殺した後に処理したものだという。

 紫苑は警察署に行き、その時に聴取を担当していた警察官を呼び出した。

 清潔に整ったスーツを着た彼は紫苑を見ると、駆けつけてきた。


「紫苑さん。お元気でしたか?」

「その節はどうも」

「あの事件のことで思い出したことがあると言っていましたが、何ですか?」

「その前に訊きたいことある」

「はい?」

「現場に白百合はあったか?」

「? いえ、現場検証に行った時は首を絞められた被害者がいただけでしたよ」

「そうですか……」


 つまり、紫苑以外に三波が不思議な白百合に絞められて殺されたことを知らないということだ。そしてその白百合は消えている。

 

「信じられない話だが……私の意識が朦朧としていたゆえの幻覚かもしれない。それを前提に聞いてほしい。あの少女は白百合に殺された」

「? はい?」


 警察官はかなり怪訝な顔をしている。当然だ。あまりにも馬鹿げている。


「あの白百合がどこから来たのか全く分からない。ただ、凶器がないということは、もしかしたらその場から誰かが持ち去った場合があるかもしれない」

「そういえば……妙なゲソ痕があったな……」

「?」

「長靴です。量販店のもので特定できなかったんですが……」


 そう言った後、警察官は慌てた。


「今の話、自分から話したことは内緒に!」


 あの時、紫苑は革靴を履いていた。三波が履いていたのはスニーカーで、あの場にいた二人とも長靴を履いていない。


「貴重なお話、ありがとうございます」

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