第18話 俺達TUEEEEEEEEEEEE!


 御前試合の後、俺達の周りは少しだけ変った。

 ヘイゼルは王位継承権はないものの王族と同等の扱いをされることになり、ヘイゼルへの誹謗中傷は王命に背くことになり厳罰が処されるようになった。有言実行するあたり、ぶるあぁぁぁぁぁっしていてもひとかどの人物なんだろうね。国王の前で啖呵を切ったこともあり俺とヘイゼルの婚約は正式なものとなり、ヘイゼルのお母さんとも引き合わされたがとても優しいお母さんだった。幸いにもお眼鏡にかなったようで、俺自身への後ろ盾にもなってくれているのでありがたい限り。ヘイゼルの善性や思いやりは間違いなくお母さん由来の者だろう、父親がアレだからね……。


 そしてもう一つ、国王の計らいで俺自身が貴族として扱われることになった。フェンバッハではなく“オールフェン”という新しいと、小さいけれど領地も賜った。フェンバッハの“フェン”に“オール(全て)”なんて皮肉でこじゃれたセンスしてるよなあの王様。 俺が廃嫡されて身寄りのない“孤児”だからそこに引っ掛けたのかもしれないけど、俺は鉄の華を咲かせるつもりも、渾身の一発を外してエンディングテーマが流れる中で悔し泣きしながら無惨に爆死するつもりもましてや止まるんじゃねえぞなんてするつもりもないのだ。


 一方で御前試合の場で国王にこきおろされたこともありフェンバッハの家の方は色々と大変な事になっているらしいが俺にとっては心底どうでもいいことだしこちらから関わるつもりもない。

 ……本来なら俺のオールフェン家は分家に当たるのだが家格と立場としては俺の方が数段格上になっているので本家と分家が逆転している状態になっていて、親父殿が顔真っ赤になってそうなのでそこはまた揉めそうな気がする……知らんけど。


 そして俺に対しても、娘を第二夫人に……なんて声がちらほらと出ている。俺自身が断ると色々と角が立つということでドーブルスやヘイゼルの家が色々とけん制してくれているので、うっかり過ちを起こさないようにしなくてはと身が引き締まる思いだ。

 ジェシカも、実家からあわよくばオールフェンの第二夫人もしくは愛妾に、なんてことを言われたとゲロってきてその指示にはジェシカ自身も困っているようだったのと、大なり小なり、今のオールフェンの家に縁を結ぼうとする家は多いから気を付けてと忠告してきた。……学園生活の中俺に声をかけてくる女子が段違いに増えたのはそういう事なのだろうね。

 しかし家からのそんな指示を当の本人にストレートに言ってくるあたり正直である。友達だから腹に一物抱えて接するのは嫌だからって言ってたけどそういうところカっちゃん的にポイント高い。

 2人でいる時にヘイゼルはジェシカなら良いのではないのか?なんて割と好意的だったけど今はヘイゼルの事だけを考えていたいところだ、まだまだ俺の足場も固まってないしね。


 アッシュやバルナも、改めてドーブルス派として一緒に戦ってくれることを表明してくれている。特に大分かなりシスコンのアッシュは、自分の冤罪を晴らす事よりも妹を慮った事でドーブルスへの好感度が上がっていたなぁ。

 一躍王位継承権の争いの有力派閥となったドーブルス派の勝ち馬にのりたい下心丸出しの貴族たちがすり寄ってきたりしたがその悉くをのらりくらりと上手に回避しているけどドーブルスはやっぱりスパダリなんだと思う。

 俺と同じ歳なのに政争の真っただ中に放り込まれたのに頑張っているのってすごいと思うのでこれからもしっかりと支えてあげたいよね。

 そして今は部屋で2人でダラダラとくつろいでいる真っ最中なのだ。


「……なぁ、スーさんや」


「なんだいカッちゃん」


 そういえば、と気になっていたことをポロリと聞いてみる。


「御前試合の報酬でヘイゼルの事を嘆願したのって俺もすごく最高にCOOL!だって思うんだけど、冤罪の事とか元婚約者の事とかは良かったのか?」


 俺の質問に、ポカンとしたあとでにこりと――――乙女ゲーの主人公だったら思わず推しになってしまいそうなキラキラの笑顔と一緒に言ってきた。


「あぁ、それは自分たちで解決するから大丈夫。俺達なら余裕、だよね」


 そう言ってウインクを飛ばす一挙一動が様になっているけど、全く人たらしな王子様である。しょぉ~がねぇなぁ~と頑張る気にさせるのがうまい。


「そうだな、俺達ならできない事はないさ。……俺達TUEEEEEEEEEEEE!だからな!!」


 フォイフォイな兄とか、その後のヨツンヴァインとか、俺達の元婚約者組や俺の実家。それと明らかに俺に対してヘイトを貯めていた王国最強騎士様とか不安の種はまだまだあるけれど、俺達ならなんとかなるだろう……いや、してみせると思うのであった、まる。


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