第36話
「楽しかったならよかったね!今日は部活もあるし楽しみだ!」
「そうだね。でもちょっと会うの緊張するかも…?」
何を今更、と笑う小春を横目で見ながら本音をこぼす。どんな顔をして深瀬先輩と話せばいいのかわからないどころか、今は深瀬先輩の姿を見ることさえ照れ臭い。
「今日の部会何するんだろう?また調理実習したいな!」
小春の言葉で前回の実習を思い出し、とても初歩的だけど次の実習時はけがをしないことを目標にすることを心の中で決めた。
放課後、家庭科室に行くと鈴木先輩が1人で黒板に何かを書いていたので小春と共に挨拶をする。
「お疲れ様です!」
「こんにちは。」
振り向いた鈴木先輩はいつものように太陽のような笑顔で挨拶を返してくれた。
「お、美恋ちゃんと小春ちゃん!お疲れ!」
黒板の近くの席に座ると、鈴木先輩が文字を書きつつこちらに背中を向けながら話しかけてきた。
「今日からはね、文化祭のアイディア出しと試作品づくりをしていくよ!」
「もう文化祭ですか?確か9月くらいじゃ…」
小春の言葉に苦笑いをしながら鈴木先輩は答える。
「それが意外と時間ないのよ。クラスの出し物もあるし、先生の許可とかも必要だから結構夏は忙しいんだよ~。」
「そうなんですか…。でも初めての文化祭、楽しみです。」
私の言葉に鈴木先輩はにっこりと笑った。
「そう言ってくれると先輩としてはなおさら張り切っちゃうな。受験もあるけど、私たちにとったら最後の文化祭だからね。」
「最後」という言葉に胸がちくっとした。当たり前だけど、鈴木先輩と深瀬先輩にとっては今年が最後なんだ。もう、来年には同じ場所にいられないんだ。
しんみりとした気持ちになっていると、深瀬先輩が姿を現したため心臓の鼓動が早まって顔が熱くなる。やっぱりどうしたって昨日のことを思い出してしまう。
「深瀬先輩!こんにちは~。」
「お疲れ様です。」
何も知らずに深瀬先輩に声をかける小春の陰で小さな声で挨拶をする。深瀬先輩はいつも通り柔和な笑みを浮かべて挨拶を返してくれた。いつも通りすぎて昨日のことが夢だったかのように思えてきてしまう。
1人悶々と考えていると、島田君や先輩方がやってきて部活が始まった。
「今日からはね、文化祭について考えます!何か作りたいものの案が欲しいから近くの人と話し合ってみて!ちなみに去年は力ちゃんの案で動物の形のカップケーキを作りました!」
鈴木先輩が去年撮ったであろうカップケーキと調理部員の写真をスクリーンで見せてくれる。今より少し髪が短く幼い印象の深瀬先輩が写っていてドキッとした。
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