第37話

「やっぱり受けがいいのはスイーツ系かなぁ。美恋はなんかアイディアある?」

「え?ああ、そうだね。クラスと被らないかも考えなきゃいけないし…。」

「そっか!そう考えるとちょっと工夫したものがいいのかなぁ?」

島田君と話す深瀬先輩をぼーっと眺めていると、小春から声をかけられたためあわてて応答する。全然集中できない。

「何かアイディア出た人いる~?」

鈴木先輩が黒板前に戻って全体を見渡すも、なかなかアイディアが出てこない。見かねた深瀬先輩が話し出した。

「まあ、今日絶対決めなきゃいけないわけではないからさ。何かアイディアを持ってくるのを宿題にしようか。」

「それいいね、力ちゃん。次回の部会までの宿題にしよう!」

というわけで、アイディア出しは次回の部会までの宿題となった。帰り支度をしていると、深瀬先輩から声をかけられた。

「美恋ちゃん、小春ちゃん。一緒に帰ってもいいかな?」

「は、はい…。」

緊張でうつむいたまま答えると、その様子を見ていた小春がにんまりと笑って答えた。

「あ、すみません!私今日は彼氏と会うので!ぜひ2人で帰ってください!」

そのまま小春は家庭科室を後にしてしまった。今日は約束があるなんて言ってなかったから、絶対私と深瀬先輩を2人きりにするための嘘だ。

「じゃあ美恋ちゃん、帰ろっか?」

「そ、そうですね。」

並んで歩き始めたものの、デートのことを思い出してなかなか深瀬先輩の顔が見れない。でもいつまでもうつむいていたりそっぽを向いていたりするわけにもいかないので、思い切って顔をあげて深瀬先輩の顔を見る。私の様子を心配そうに見ていた深瀬先輩は、安心したように笑った。

「やっとこっち向いてくれたね。今日ずっと様子が変だったから心配だったんだ。」

「すみません…。どうにも意識しちゃって…。」

「美恋ちゃんはそういうところもかわいいね。」

「あ、ありがとうございます…。」

ドキドキしすぎて身体まで熱い。昇降口のガラス戸に映った私の頬は赤く染まっていた。

「そういえば、美恋ちゃん今日は髪いつもと違うんだね。目玉焼きだ。」

今日は雑貨屋で一目ぼれした目玉焼きのヘアクリップを髪に留めている。深瀬先輩はそのことに気づいたようだ。

「食べ物モチーフに弱くて。ほかにもスマイルポテトとかオムライスとかのヘアクリップも持ってますよ。」

笑いながら答えると、深瀬先輩は何か思いついたような顔でスマホに何かを打ち込み始めた。不思議に思って見ていると、打ち込み終わった深瀬先輩が満足そうに笑った。

「美恋ちゃんのおかげで思いついたかも。ありがとね。」

「はい…?」

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