第6話 創元推理からハヤカワ・M へ

 そのころは、貧乏学生だったにもかかわらず、新書を自分で買って読むのが当たり前に感じていました。古本も一部にあったと思いますが、人が一度読み終わった本を開いて自分が読み返すことが、本当にいやだったみたいです。

 今なら書店に無ければ、ネット検索などで注文したりもするのでしょうが、当時は出版社に対してそのような手間暇かける余裕もないので、創元推理文庫として新作本が少なくなってきたときに、早川書房から新たなミステリーなどの文庫シリーズがだされ、歓喜したのを覚えています。版権などにより今まで出版されなかった推理小説や新しい作家たちが掘り出されてきたのです。


 前章で記した作家たちのシリーズはもちろんですが、一番にハマってしまったのはエド・マクベインの❝87分署シリーズ❝本格警察もので、主人公のスティーブ・キャレラを中心に数人の刑事がおりなすドラマで、一話数件の事件やそれぞれの日常が淡々と経過していきメインの事件が解決してゆくストーリーで、人間味あふれた物語ゆえにハヤカワでは「警官嫌い」を手始めに約50冊くらいはあったと記憶している。


 それと、創元の法廷物として15冊くらい読んでいたペリー・メイスンと秘書のデラ・ストリートそして私立探偵ポール・ドレイクが活躍するE・S・ガードナーのシリーズは法廷物とは感じさせない展開で面白く読み漁りました。A・A・フェア名義のラム探偵も笑えて良かったです。それと、創元推理文庫ではハードボイルド小説に分類されて読むのをずらしていたロス・マグドナルドとかレイモンド・チャンドラー、ダシール・ハメットなどの薄暗い暗黒街の映画化された小説にも興味が増え、読んでいたのです。


 加えて、ハヤカワミステリ文庫ではアメリカやイギリス、フランスなどの推理作家クラブの傑作選という触れ込みの短編集が色々とまとめて発行されたので、なかなかの読みごたえがありました。また、G・K・チェスタトンのブラウン神父ものにも似たハリイ・ケメルマンのラビ(ユダヤ教の聖職者)の推理については、機知に富んでいて考えさせられるシリーズでした。


 ほぼ、高校から大学へと進学してからも推理小説主体で、時間があったら創元とハヤカワの文庫本を探して、一気に読み込んでいた青春時代でした。ちと横道にそれるかもしれませんが、若かりし頃のびーる男、外国映画が好きなことから「映画クラブ研究会」なるサークルに入っていた関係で、人気の映画は当時は当り前であった2館同時上映のフィルム運び(自転車)なるアルバイトをやった経験があります。イケメン俳優のアラン・ドロンが主演の「怪傑ゾロ(り)」だったのですが、たいへん面白かったみたいです。


 最近、本格推理小説などは古書店などにいっても隅に追いやられるか消滅しているので、買いあさってよく読んでいた者にとっては、少なからず落ち込んでいます。どうしてもライトノベルとかヤングコミックなどのビジュアルに負けているようですね。 🌊だ 🌊だ みたいな?



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