第35話 ジーザスよ、やすらかにあれ







  異世界ものを書いた当初は、とりあえずモノローグに決まって入るものがあった。


「ジーザスのクソッタレ!!」


 異世界もの初期時空で多用されたそれは、アルファベット表記になおすと「Jesus f**king christ!」と言ったところだろう。


 会話文、またはモノローグを英語表記にしたら……ほとんど放送禁止レベルだったのではなかろうか?


 ある意味で注目、またはスコップされなくてよかったのやら、悲しいのやら……一旦終わった以上は、ただの回顧録のようなものに過ぎないけどね?


 ジーザスという単語がなにを表しているのか、読んでいる皆様にはお察しであろうが、かつて書いた異世界ものにおいては、女神を表すものであった。


 主要な登場人物のなかにおいて、いち早く名前が明かされたのは、ジーザスこと、ジェニファー=ズザンネ・サマーフィールドである。


 アルファベット表記では、Jennifer=susanne・summerfield.


 ファーストネーム、ミドルネーム、ファミリーネームからそれぞれ、je,su,s を取って、jesus というニックネームの出来上がり。


 なお、本来であれば Jenny(ジェニー)の予定だったが……なにを勘違いしたのか、作者がジェニファーと書いてしまったことにより、ファーストネームが変わったというハプニングもあった。


 当初は、敬虔な聖職者的な性格の女神として登場し、クレイジーな魔王にただ振り回されるだけのコメディリリーフ的な役割であったが、書いているうちにやがては愛着というか、情が芽生えたことにより、深く掘り下げることにしたのだ。


 まず、彼女の容姿は北欧系、のちにアメリカ南部出身と明記し、美しきサザン・ベルでありながら、あどけなさを残した感じをイメージすればするほど……あれ、私はもしかしたら、魅力的なキャラクターを作り上げているのでは?


 おまけに翼の生えた天使そのものだな? HAHAHA!


 テンションの上がった私は、異世界ものでジェニファーの出番を増やし、更には彼女の前世エピソードを追加した。


 前世において彼女は……かつて主人公と親しい関係だったということにした。


 出会いの形は……そうだな、ある意味で最悪に等しいが、彼女はアメリカ海兵隊の兵士として登場し、虐殺に等しい戦犯行為を行う主人公に対し、激昂した彼女は詰め寄る……と言うのが、主人公の前世における記憶から、お互いのファーストコンタクトのように書いた。


 もっとも、主人公はブービートラップと看破したことで隊を救ったこともあり、ジェニファーは戦地の現実を目の当たりにし、うちひしがれるも……厳しいながらも優しい主人公に護られていることを知ったことで、行動を共にするようになり、やがては信頼し、恋愛関係に至るといった具合だ。


 前世におけるエピソードは幕間で追加され、お互いにとって実際のファーストコンタクトは変更されたものの、先の戦犯行為に等しい行動はともかく、主人公との関係が進展していく流れを描いた。


 主人公と同様、前世で明確に死亡する描写を描かれた人物である。


 異世界においても、主人公の記憶が戻るまで振り回されたばかりか、なんなら発砲されてもいるが、辛抱強く変わらずに接し続けたことで、やがては前世の記憶を取り戻した主人公と和解すると言うのか、報われるのであった。


 その後、訳あって主人公陣営と敵対し、近代兵器で武装された魔王の城に向かって、単身で空から襲撃をかける。


 チートにも程があるターボジェットエンジンのようなバックパックを背負い、城を守る魔王軍兵士たちの対空砲火をかわし続け、地を這うかのようにして低空を飛んで翻弄。


 彼女は爆弾を抱えながらカミカゼアタックを試みようと、攻撃の機会を伺っていたが、必死に応戦する魔王軍を前にして、それは敵わず、対空砲火を釘付けにするのが精一杯のような動きを見せた……主人公は気付く、彼女は……囮役なのではないかと?


 それでも彼女を近付けさせる訳にもいかず、必死に応戦する対空戦闘要員は、全火砲で彼女を狙い続けたその時だ。


「敵機直上!! 急降下!!」


 そう、彼女は……囮役を全うしていたのだ。


 戦ったご先祖の誇りである、サザンクロス(アメリカ連合国旗、正確には海軍旗)と共に彼女は───。







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