第46話 友達も好き
私、椎葉英玲奈は自分の席に座り、机に頬をつけながら窓の外を見ていた。
雨は強さを増しており、野球とサッカーは確実に順延だ。
「鈍感」
さっき、同クラの女子たちが有志先輩と翔の試合見たかったと嘆いていたのを思い出す。
「可愛い」
「そりゃどうも」
前の席に机に背を向ける形で座る楓が机についてない方の頬をつんつんしてくる。
「なーに不貞腐れてんの?」
「思うようになんなかっただけ」
「ふーん」
おそらく楓にはお見通しだ。
「かっこいい男ってさ、捕まえるの難しいよね。
幻のポ◯モンみたい」
「ミ◯ウか」
「翔はジ◯ーチ」
「マスボ欲しい〜」
もう手に入らないし、ボールを持ってたのは柚葉先輩だった。
翔が逃げる日はいつか来るんだろうか。
来たとしたら今度は私がボールを手にして、捕まえたい。
「柚葉先輩留学するらしいからその間に奪っちゃえば?」
「それはいや」
柚葉先輩が悪い人ならよかった。
悪い人なら気にせず、奪えた。
でも、柚葉先輩は良い人で優しい。
こんな人から奪うなんて出来ないし、したくない。
だから、待つしか出来ないんだ、私達は。
「英玲奈、お互い苦労するね」
「楓、あんたも...?」
楓は立ち上がり、私に乗っかるようにギュッと抱きしめ、耳元で囁いた。
私は驚き、問う。
「バスケがあるからまだ恵まれてるよ、英玲奈は」
小さく頷いた楓は私の胸を軽く揉み、声を低く暗くする。
不思議と嫌な感じはしなかった。
「楓だって、吹奏楽がある」
「吹奏楽なんて、ほとんど関わらないよ」
「そっか...」
楓は首を振り、ため息をついた。
そうだ、吹奏楽は野球部と大会の時、関わるがそれは部長、副部長になった場合だ。
一年生にそんな暇はない。
「ホント同クラになれてよかった」
「それはどっちの意味?」
「両方」
両方...ね。
「女同士でご飯食べよっか」
「いいよ」
「立つから離して」
「おけ」
笑顔を向けると楓は笑顔を向け返してくれた。
たまには二人きりでご飯ってのも良いもんだ。
にしても・・・
「まさか楓も好きなんてねぇ」
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