第45話 お着替え

「しょー」

「なんだよ」


英玲奈のことを考えながら歩いているとスクールバッグを肩にかけ、タックルして来る七瀬。

普通の男子生徒ならよろけるほどの威力だが俺くらい鍛えると微動だにしない。

七瀬はそれをわかっていてやっている。

万が一にも怪我をさせたら責任取れないからな。


「着替えたいんだけど、混んでんのね、どこも」

「で?」

「空き教室で着替えるから見張りしてくんない?」

「それくらいなら全然いいぜ、どこの空き教室?」

「この上」


天井を指差すと直ぐに階段へ走る七瀬。

俺は早足で着いていく。


「ここ」

「行ってら」

「何言ってんの?」

「は?」


何言ってんのはこっちのセリフだ。


「こんな美少女が空き教室で着替えてたら盗撮されるでしょ、外から。

だから、一緒に着替えよ」

「お前、ブラとか見られても良いわけ?」

「しょーなら良いよ」

「なら俺も着替えるわ」

「おけ」


男と一緒にいてもされると思うが...

ーーまぁ、ななのブラとか見慣れてるからなんも感じんけどさぁ


「カーテンしめて〜」


窓のカーテンをしめ、ドアのカーテンもしめる七瀬。

ここはおそらく昔女子更衣室だったんだろう。


「めっちゃ濡れてるきもい〜」

「ちょっと待て」


素早くブラとショーツのみなると七瀬はブラに手をかける。

俺はストップをかける。


「何」

「見えるだろ」

「いやん」


ニヤつく七瀬。

もっと嫌そうな顔をしろ。


「まぁ、見せないけど」


七瀬は背を向け、素早くブラを外した。

普通は新しいブラをカバンから出してからじゃないだろうか。


「学校で全裸になるってなんかいけないことをする感があるね」

「双子だけどな」

「勃起してる?」

「なな、乳首ビンビン?」

「変態」

「お前もな」


俺たちは今全裸で背中を向け合い、身体を拭いている。


「やば、誰か来たかも」

「ロックしてるから大丈夫だ」


足音と話し声がするがロックは俺がした。


「雨やだねぇ」

「女子は特にだろ」

「下着濡れちゃうとねぇ、今日みたいに持ってないし、ブラなんかは特に」

「へぇ」


話してる間に俺は着替えを終えたが七瀬は時間がかかっているようだ。


「あ、逆だった」

「何やってんだ」


おそらくショーツを反対に履いてしまったんだろう。


「ほい、その袋入れといて」

「羞恥心を持て」

「下着なんてつけてなければ、ただの布よ」


脱ぎたてホヤホヤのブラとショーツを投げる七瀬。


「お前、男子の妄想力舐めるなよ?」

「シコるならご自由に〜、絶対チクるけど」

「シコられねぇよ、俺以外には任せるなよ?」

「するわけないでしょ」


俺は一応忠告し、袋に入れる。

七瀬の言う通り、俺はあや姉や七瀬の下着で興奮は全くしない。

七瀬の言う通りただの布だ。


「はい」

「...」


振り向くと七瀬は顔を真っ赤にする。

大事な箇所が丸見えだ。

なぜ、ブラだけ付けてるんだ、隠すなら下だろ、まずは。

というか...


「言わないで」

「わかった」


なんでパイパンなんだ!


「陸部は皆そうだから」

「いや、聞いてないが」

「背向けて!」

「はいはい」


そういや、陸上のユニって、処理しないと見えちゃうもんなぁ。


「やっぱりさ」

「うん」

「ないとへん?」

「いや、清潔感あって良いんじゃない?」

「へぇ」


着替えを終え、教室を出ると七瀬は立ち止まり、シャツの裾を掴んでくる。


「アンバランスだと思わなかった?」

「思わないよ」

「見られたのが翔でよかった」

「そうだな」


他の男子だったらまぁ、広まるだろうな。


「今日からお風呂一緒でいい」

「なんでだよ」

「これを隠したかっただけだし」

「マジか」

「うん」


七瀬が入りたがらないのはこれが理由だったのか。

同い年だからとか関係ねぇじゃん。

まぁでもよく考えてみたら七瀬、俺に対して羞恥心まるでないもんなぁ。


「裸見られるの別にいいわけ?」

「小さい頃に見られてるし」

「そういう問題じゃないだろ」

「あや姉」

「納得」


うん、もう全部あや姉のせいにしよう。


「うちの家族変わってるよね」

「だな」


俺たち相良家はとても変わってると思う。

上げ出したらキリがないほどに。


「墓場まで持っていけると思ったんだけどなぁ」

「陸上やめたら別にしないだろ」

「結婚してるからその頃」

「あーね」


2年後ぐらいに酔っ払ったあや姉がバラしそうな気がするが気のせいだろうか?


「ところでおっぱい揉ませてやろうか?」

「いらん」

「Eカップだぞ?」

「申告してくんな」


ちなみにあや姉、これよりデカい多分。


「まさか、Eでも小さいと言うのか!?

このおっぱい星人め!」

「家族だからだよ!」

「柚葉先輩のは揉めんぞ!?」

「決めつけんな!」


付き合ってるんだ、そのうち...


「ちなみに柚葉先輩より大きいんだぞ?」

「マジ?」


柚葉はDくらいなのか?

だとしたら...


「揉んどく?」

「しないっての」

「揉ませねぇよ」


ニヤニヤしながら胸を持ち上げる七瀬。

俺はケツを軽く蹴った。

七瀬は蹴り返してくる。

ーーどっちだよ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る