第21話 自分の力で手に入れるのが重要

「よぉ、モテ男」

「玲央、また遅刻かよ」

「真打は遅れて登場ってな」


英玲奈、絵里、柚葉とメシを食っていると高校生らしからぬ紫のロン毛を靡かせる玲央こと、九条玲央が英玲奈の頭に腕を置いて、俺に視線を合わせてくる。


「邪魔!

それとカッコつけてんじゃねーよ、玲央のくせに!

キモいんだよ!

男のポニテは外人しかやっちゃダメなのわかる!?

ほら、みんなも言ってやれ!

さぁ!はい!」


英玲奈は思い切り腕を振り、力強くで玲央の腕を退かすと指差して、叫ぶ。

そして、俺たちに合唱を促す。

ちなみにこの2人、中学の頃からそれなりに仲が良い。


「うっせ、チビ」

「なんだと!?」

「まぁまぁ」


向かって行こうとする英玲奈を絵里が止める。


「あ、玲央キュンだー、相変わらずおっきいねー」

「世那垣先輩...」

「その反応好きよ♡新凪さん的にポイント高い♡」

「マジっすか!」


世那垣先輩にギュッと後ろから抱きつかれ、頬を赤く染める玲央。

世那垣先輩はビッチ先輩だ。

ビッチ先輩は俺たちにこそ、ビッチ先輩なんて呼ばれているが校内の抱きたい女ランキング2年連続ぶっちぎりの一位で男子生徒の日々を潤している。

身長198センチで高校卒業後、NBAに行きたいと言ってる超高校級バスケプレイヤーの玲央ですら、その魅力には虜にならざるをえない。

俺は絶対お断りだが。


「新凪、他の男に抱きついてんじゃねぇよ、お前は俺のだろ」

「フジ先輩、いつのまに付き合ってたんすか」


玲央に抱きつくビッチ先輩のケツを軽く蹴ったフジ先輩。

俺は苦笑いを向ける。

何人目の彼氏なんだろうか。


「昨日だ、お前も早く絵里と付き合えよ」


まだ付き合って、1日すら経ってなくて草。

それで俺のもんは早すぎるだろうよ。

この人がイケメンなのにモテない理由が分かった気がするな。


「やだ、フジ先輩ったら、早く結婚しろだなんて、まだ早いですよ、私達まだ1年ですよ

まぁ、翔くんがいいなら私は付き合い。

間違えた、結婚しますけど」

「えりち!?」


何、顔真っ赤にしてんだ英玲奈。

絵里の冗談に決まってるだろ。

そして、絵里、身体クネクネさせて、妄想すんな。


「どうする?」

「キース!キース!」

「ぶちゅーっと行ちゃえ!」 

「絵里めっちゃエロいな」

「アンタいつから絵里って呼べるようになったのさ」


一気にメス顔になった絵里はキスする勢いで顔を近づけてくる。

周りは手を叩き、盛り上がる。


「翔はアタシのモノなの!!!

他の誰にも渡さない!!!」


絵里から遠ざけるために思い切り俺を抱き寄せた柚葉は叫び、顔を真っ赤にする。


「柚葉」


抱き寄せられれば勿論見上げることになる。

俺は頬を赤く染め、名前を呼んだ。

雰囲気でわかる。

これはそういうことだ。


────────────────────


「アタシと幼馴染になってくれてありがとう。

絶対離さないから付き合ってください。

この前はフッちゃってごめん。

約束忘れちゃったのかと思って。

ねぇ、覚えてる?」


アタシはギュッと抱きしめたまま、プロポーズした。

他の子とキスなんて、絶対に嫌だ。

今だ、今しかない。

この機会を逃したら翔は他の子に奪われてしまう。


「あの場所で俺と柚葉は指切りしたな」

「うん」


よかった、覚えてくれてた。


────────────────────


「柚葉、付き合おう。

けど、球技大会は絶対負けん」

「望むところだ!」


見上げたまま、微笑むと柚葉は満面の笑みで返してくれる。

これなんだ。

これが柚葉と俺にしかないトクベツで俺と柚葉の普通で絶対手離したくないモノなんだ。


「キスは水族館デートでな」

「うん、約束達成だしね」

「あれって学年別でよかったんだ」

「決勝だからね」

「そっか」


椅子に座り直して、ギュッと抱きしめると柚葉はギュッと抱きしめ返す。


「あのー、お二人さん、恥ずかしくない?」

「いや、全然?」

「注目されるの好きだし」


俺と柚葉は注目されるのが何より大好きだ。


「めっちゃバカップル!」

「あざっす」


最高の褒め言葉だ。


「いや、褒めてねーよ」

「柚葉」

「なーに、翔♡」


フジ先輩の苦笑いにはギュッと抱きしめ合ってやり返す。

今から最高の時間が紡がれて行く。

ーー愛してるぜ、柚葉


────────────────────


「ねね、絶対対戦しようね」

「あぁ、勿論」

「かっくい〜」

「お前は世界一可愛いよ」

「ありがと♡」


食堂を出た後もラブラブを見せつける2人。


「お似合いだと思う。

でも、私は諦めない。

私が翔くんを射止める!」

「私達は戦う女達、戦おう、柚葉先輩と!」

「うん!」


私、椎葉英玲奈とえりちは誓う。

狙いを定めた男は自分の力で抱き寄せると。

ーー最後に勝つのは私だ。

ーー絶対負けないんだから。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る