第22話 天才は天才を知り、想いを寄せる

「どっちもフルメンバーだな」

「めっちゃ見応えありそう!」

「女子だけでも椎葉、水野VS浦田、西野だもんな」

「1組だいぶキツくね」

「それな」


アップが終わり、学年別決勝が始まるまであと数分。

上から観客が好き勝手言う。

正直、玲央が入ったことでかなり俺たちは分が悪くなった。


スタメンは以下のとおり

1ー1

PF(パワーフォワード)

相良翔

SF(スモールフォワード)

椎葉英玲奈

PG(ポイントガード)

水野海

C(センター)

浅野

SG(シューティングガード)

陽浦楓


1ー4

PF(パワーフォワード)

真鍋翔天

SF(スモールフォワード)

浦田玲

PG(ポイントガード)

西野花火

C(センター)

九条玲央

SG(シューティングガード)

相良七瀬


「観客はあぁ言ってるけど、花火は本職じゃない。

花火は私と同じスモールフォワードが本職。

中学も確かそう。」

「へぇ」

「いや、アイツ本職ポイントガード」

「あれ?そうだっけ?」

「ウチでは違うってだけ」

「おい、英玲奈、テキトー言ってんじゃねぇよ」

「めんごー」


こっちはセンターはバスケ未経験の浅野だし、シューティングガードの楓は足が速いだけでドリブルは全然。

本職じゃないならまだ可能性あるんだがな。


「そういや、なんで女子、バレーとバスケ多いの」

「野球は投げれないし、やったことないからだろ」

「サッカーは外だから寒いじゃん」

「つまり、消去法ね」

「そゆこと」


楓とか、英玲奈は野球で全然良いと思うんだよな、速いし。


「なんでジャンプボール私なの?」

「ぜってぇ勝てないから」

「玲央はチートだからな、頑張れ、楓」

「ムカつくけどね」


ティップオフの合図となるジャンプボールに勝てる可能性は0%。

198cm相手に高さ勝負をしてもどうにもならない。


「七瀬!花火へ!」

「花火ちゃん!」

「ナイスパス」


予想通り、ジャンプボールに勝った玲央が弾いたボールは七瀬へ。

七瀬は指示通り、ポイントガードの花火へパスを出す。


「へぇ、やっぱり玲央には相良くんか。

そんで玲には英玲奈。

こっちが使えるのはソラと七瀬。

うん、考えたね」

「喋ってる暇あんのかよ」


花火に水野がつくと花火は冷静にフィールドを見渡し、余裕を見せる。

その余裕が水野の癇に障らないわけもなく、水野は声を荒げる。


「あるよ、だって、カイがわたしについてくれる時点でこっちの勝ちだもん」

「ありがと」

「ッ!」


花火は抜くと見せかけ、ソラへパスを出す。

流石の水野もこれには反応出来なかった。

加えて、浅野はソラのスピードに対応出来ていない。

まずいな...


「ソラ!そのまま決めちゃえ!」

「ナイスゴール!」


ソラは簡単にレイアップを決めた。


「英玲奈、相良お前らが鍵だ」

「あぁ」

「おけ」


楓から受け取った水野は呼吸を整える。


「2人がかりって、めっちゃ注目されてんじゃん、私」

「そりゃ特待生ですから」

「英玲奈、ストーカーしたげる。」

「クッソ迷惑!」


英玲奈には花火、玲のダブルチーム。


────────────────────


「相良はノーマーク。

へぇ、そういうことか」


おそらく相良は玲央で完璧に止めれると相手は思っている。


「なら、突っ切る!」


アタシは自分で切り込むことにし、地面を蹴り上げる。

七瀬とソラなら抜ける。


「俺がいなきゃよかったな、みーずの」

「クソが...」


想定外だ。

玲央が止めに来るなんて思いもしなかった。

相良をノーマークなんて、中学時代の相良を知ってるこいつらが出来るわけ...


「七瀬か」

「せいかーい、アイツめっちゃ賢いよな、お前の性格も翔がお前を頼りに動くことも計算してやがった。」


簡単にボールを奪われる。

七瀬はプレーでなく、ブレーンとしての絶対的エース。


「すっげ」

「エッグ」

「玲央!玲央!玲央!!」


ボールを奪った玲央は最も簡単に浅野と楓を抜き、ダンクを決めた。

4ー0


「スリーしかねぇ」


アタシは拳を握り、歯を食いしばる。

そうだ、アタシにはまだこれがある。

これさえあれば、まだ...


「お前の身長じゃ、女子には通用しても男には無理だぜ」

「ディフェンス弱すぎ」


あっけなく叩き落とされ、まるで見本だと言うかの如く、スリーを決められる。

あぁ、もうこれ勝てねぇわ。

アタシは手に膝をつき、絶望する。

7ー0


────────────────────


「見つけよう、私とアンタで行くよ」

「あぁ」

「水野は?」

「なしで考える」


翔と私はピンチを脱するべく、フィールドを観察する。


「だから、アンタは無理」

「はっ!やってみなきゃ、わかんないでしょ」


花火と玲のWチームはそう簡単には抜けない。


・・・それがどうした?


こんなところで負けるやつが全国獲って日本代表になって、オリンピックに出れんのか?


答えは否。


行けない、ここで負けたら待ってるのは高校で終わりのバスケ人生


んなの私には似合わない


欲しいのは常に勝利だけ、負けはひとつもいらない


行くぞ、ギア1!!


「着いてきてみろ」


内に入られないように守る玲には目もくれず、抜かれても玲央が追いつけると踏んで、花火は若干右を空けて守っている。

私は空いてる右へ切り込む。

当然、花火が止めようとしてくる。


「おっそ」


ぶち抜いた


ほら、翔、カイ


私がこの試合の支配者だ。


この試合、まだまだこっから。


私がいれば、絶対勝てるぞ


着いて来い


私を中心に組み立てろ!


「残念だったな、英玲奈」

「あんたって、ホント脳筋。

そんなんじゃ、NBA行けないよ」


私はアイツにパスを出した。


勝利の可能性を高めるために。


決めろ相棒


────────────────────


「英玲奈、やば」

「どけ、七瀬」

「兄弟には優しくしてよ」

「試合以外でな」


英玲奈からのパスを受け取った俺は七瀬にアンクルブレイクを仕掛け、倒す。


天才、椎葉英玲奈ここにあり。

そして、もう1人、ここには天才がいる。


「決めろ、カイ」


コイツのスリーはバケモンだ。


やられたらやり返す、これが俺の信条だ。


────────────────────


「翔」


初めて名前を呼んだ気がする。

あぁ、英玲奈や絵里、柚葉先輩が惚れるのが痛いほどわかる。

こいつ、常に自分中心に見えるけど、勝つためならなんだって出来るすげぇやつで仲間は絶対見捨てないんだ。


「勝てないって思ってごめん、翔と英玲奈がいれば絶対勝てる」


アタシはスリーを放ち、すぐに後ろを向き、腕で溢れ落ちそうになってる涙を拭く。

アタシはまだまだ弱い。

こんなとこで気づくとは思わなかった。


「水野カッケェ!」

「7ー3!!」


盛り上がるスタンド。

アタシはガッツポーズしようと拳を握っ...


「水野、じゃねぇや、海。

よくやった、これで俺たちは勝てる」

「あぁ」


翔に頭を強く撫でられる。

髪はボッサボッサになった。

でも、嬉しい。

これガチ惚れの瞬間ってやつか。

最高じゃん。


「英玲奈、アタシも参戦するわ、争奪戦」

「りょ、かっこいいっしょ、私の同級生」

「あぁ、最高にな」


英玲奈とグータッチし、誓う。

ーーアタシが頂く!


7ー3

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