第20話 恋のパワー

「暇だー!」

「俺らは全く暇じゃないけどな」


球技大会は全部で4種目あり、英玲奈はバスケとサッカーを選択。

だが、サッカーは一回戦で負けてしまったため、もう出番はない。

一回戦は女子でトップクラスの運動神経を誇る英玲奈がいなくても他の女子が頑張ってくれれば勝てると踏んでいたが甘かったな。


「えりち〜、どうにかねじ込んでよー」

「下剤でも入れるか、ハゲのポカリに」

「おい」

「嫌いなんだ、しょうがない」


とても悪そうな表情を浮かべ、声を躍らせる絵里。

怖い、怖すぎる。

ただ嫌いなだけで下剤入れてくる女とか、やばすぎる。


「ハゲはしょうがない、やはり顔は大事だ」

「お前誰かわかってないだろ」


英玲奈はハゲと会話したことすらないが絵里が嫌ってるという時点で何かを察してしまったらしい。

ちなみにハゲが嫌われる理由はデリカシーがない。

以上。


「知らないがハゲは嫌われるものと相場が決まっている。

ほら、よくあるだろう?

野球部のハゲより爽やかなサッカー部の方がモテること」

「めちゃくちゃ的確な例えやめろ、悲しくなる」


俺もシニア時代、坊主で非モテだったから野球の伝統を死ぬほど恨んだ経験がある。


「女子もさ、ショートカットってめっちゃ可愛いくないと許されない感あるよ」

「わかる、ポニテが安牌」


この2人がいうと若干嫌味だが実際ショートカットが似合うって、なんか人と違うんだよな。


「ポニテ女子が髪の毛下ろすとめっちゃ尊い。

わかる?」

「わかるぞ、旦那、ヘイ、えりち、髪の毛下ろして」

「はーい、どう?」


シュシュを取ると髪の毛がふわっと舞い上がり、ゆっくりと落ちる。

これがいいのだ。

わかるだろ?全国のポニテ推しの諸君?


「髪の毛下ろしてるのも好きかもしれない」

「ホント!?」

「うん」

「がんばるね!」


本当に嬉しそうに両手を胸の前にして、グッと拳を握って、満面の笑みを向けてくる絵里。

そして、この言葉通り、絵里は一回戦、準決勝を6イニング無失点に抑えるとバットでも猛打賞2回を達成し、チームに勝利を呼び込んだ。

髪の毛下ろしただけでここまで調子上がるの凄すぎるだろ...


「恋のパワーだね!えりち!」

「うん!」


英玲奈と絵里はぴょんぴょん飛び跳ねながら抱き合う。

揺れる揺れる。


「野球とバスケ、どっちも決勝とかすごいじゃん。

アタシとやるまで負けんなよ、後輩」

「そっちもな先輩」


柚葉が後ろから抱きついて来た。

ったく、昔から治んねぇなこのくせ。

俺たちはお互いの顔は見ずに話す。


「まずははらごしらえだー!」

「おー!」


俺たちは拳を天井に向かって振り上げ、食堂を目指す。

これもアオハルだな


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