第18話 アオハルと恋心
「なぁ、なんで俺たちが控えなんだ?」
「解せぬ」
「ほんそれ」
「カイのばーか!」
「水野のアホ!」
「無視すんなや」
「カイ!」
バスケの一回戦が始まったが俺と英玲奈は水野のせいで控え。
負けそうになったら出すと言うが負けそうになるなら最初から出しとけば良いと思うし、最初から俺と英玲奈で圧倒すれば良いだろうに。
「絵里ナイシュー!」
「やった!」
「そっか、カイは絵里と楓、ついでに浅野に自信をつけさせて、私達に楽をさせようとしてくれてるのかぁ、ふぅーん、可愛いじゃん」
「良いパートナーだな」
「そだね」
第二クォーター終了10秒前、絵里の初シュートが決まり、点差は5点差に。
俺と英玲奈はようやく水野の意図を理解する。
「第3もベンチな」
「オッケー」
「やけに素直だな」
水野が戻ってくると英玲奈はタオルを投げてやり、首にかけ、汗を拭いたのを確認するとニコニコして、頷く。
水野は若干気味悪がり、苦笑いを向けるが意図を理解してくれたことには感謝していそうだ。
「優しい相棒に感謝してるんですー、ありがとねカイ〜」
「なんだ急に!ひっつくな!
相良!どうにかしろ!」
猫のようにスリスリする英玲奈。
水野は叫び、俺に助けを求める。
「ありがとな、カイ」
「な、なにしてんだてめぇ!!」
俺は要望に応じ、ギュッと抱きしめてやった。
水野の顔は驚くほど真っ赤で普段見たことがないほど乙女だ。
バスケを選び、幸運を手にした男子の視線が集まる。
「しょーくん、私も褒めて〜」
「絵里もよく頑張った、さぁ、絵里も水野に感謝だ!」
「かしこまりー!!」
走ってくる絵里。
俺は頭を撫でてやり、絵里もハグの仲間に入れてやった。
絵里は俺に向けてウインクしながら可愛く敬礼。
このかしこまりーは野球部男子の日々の癒しだ。
このかしこまりーはどんな応援よりも強い効果がある。
「やめろばか!」
「うーん、青春だねー」
「先生、写真撮って〜」
抗議する水野の声は誰も聞かない。
そして、レナ先生が見回りに来たのを見た瞬間、英玲奈が手招きする。
レナ先生は満面の笑みで走って来た。
当然、揺れる揺れる。
「オッケー!」
「はーい、チーズ」
「球技大会最高!」
これぞ、アオハルだろう。
こういうのは今この瞬間しか味わえない。
「すっげ」
「ね、カイのスリーはやばい」
「ドリブルもやばいだろ」
「私には負けるけどね」
「スピードは英玲奈のが上だわな」
「それ」
ギアを入れたのか、試合終了までに5連続で高弾道スリー、3連続レイアップを決めた水野。
これが一年生にもかかわらず、名門の司令塔を任されると言われている水野の実力か。
「な、なぁ相良」
「うん?」
「次の試合、英玲奈と一緒にWコンビ組んでくんね?
なんかさ、お前と組むと調子良い気すんだよ」
赤面し、モジモジする水野。
俺から言おうと思っていたが水野もそう思ってたなら好都合だ。
「あぁ、良いぞ、よろしくカイ」
「よろしくな」
俺は満面の笑みで拳を向けた。
水野は本当に嬉しそうに笑みを溢し、軽く拳を添えてくれた。
「水野、俺はお前のそういうとこ好きだぜ」
「な、何言ってんだバカ!そんな意味じゃねぇよ!」
「?」
「バーカ!」
俺なんか変なこと言ったか?
なんでまた顔真っ赤にして、取り乱すんだよ、柚葉はこんなんじゃなんともねぇぞ?
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