第17話 両腕に花

「いよいよ球技大会本番、がんばろ〜!!」

「ッシャー!!!」

「相良どしたんw」

「相良くん気合い入りすぎだってw」

「運動部だねw」


担任のレナ先生が声を踊らせ、俺は雄叫びを上げる。

クラスメイトのほとんどは吹き出す。

柚葉との水族館デートがかかっているんだ。

甲子園決勝より気合いが入るのは当たり前だ。


「先輩と水族館行けんだもんねー、活躍したらご褒美とかある?」

「お土産くらいは買って来てもいいぞ」


男はそのまま教室、女子は少し離れた更衣室に向かうことになったが英玲奈は席から立ちあがろうとしない。

兄貴もいるから見慣れているんだろうが、男だって、女子がいたら着替えづらいもんなんだぞ、英玲奈。


「旦那太っ腹じゃん!よろしくね!」

「俺の懐の深さを見誤るな、英玲奈よ」

「うーん、ステキ!英玲奈さん惚れちゃうぞ☆」

「イルカとシャチ、サメどれが良い?」

「アザラシ!」

「どの選択肢にもないやつ言うのやめろ」

「捕食者は自分だけで充分さ」

「食う気じゃねぇか」

「どうも、捕食者に憧れる系女子こと、椎葉英玲奈ちゃんです!」

「よし、今日からお前のあだ名はシャチな」

「めっちゃ賢そう、旦那センスあんね」

「ありがとよ、てか、女子は時間かかんだからはよ行け」


英玲奈を好きと中等部から公言してるやつ、好きだと思われる男共からイチャイチャすんな、殺すぞという視線がグサグサ刺さってくる。

英玲奈さん、頼むからはよ更衣室行ってください、お願いします。


「チッチッ、旦那、運動部女子は速いのだよ」

「ネクタイを緩めるな、早着替えとか興味ねぇから」


ネクタイに手をかけ、取ろうとする英玲奈はわかってないなーと言うように指を振る。

おそらく、中に体育着を着ているから見られてもどうってことないんだろうがそういうことじゃない。

女子が目の前で服を脱ぐだけで男は色々想像してしまう生き物なのだ。


「はーい」

「早くね♡」

「お前もな」

「イケメン♡」

「美少女ね、英玲奈ちゃん」

「サンキュ♡」


英玲奈はようやく席を立ち、ドアは向かって歩いていく。

そして、ドアの前でウインク。

ったくよ、ホントこっちのこと何も考えてねぇんだから。

お前みたいな可愛い女からウインク貰ったら返さねぇ訳にいかねぇし、あとがめんどくせぇんだよ。

可愛いから良いけどさ。


「相良、英玲奈って良いよな」

「英玲奈、エロいよな」

「英玲奈って、なんであんな可愛いんだろうな」

「なぁ、英玲奈って、ラブコメのヒロインだよな」

「わかる」


いつもは椎葉さん、椎葉と呼んでいる男達が英玲奈と呼びたいがために俺の周りで着替え始める。


「英玲奈は呼んでいい?って聞いたら大概オッケー出してくれるぞ」

「ま、マジか!?」

「多分な」


英玲奈は別に名前呼びを特別だと思っていないと思う。


「絵里ちゃんは?」

「絵里は無理」

「マジか...」


絵里は俺ですら名前呼びまで2ヶ月かかっているし、呼ぼうとしたら睨まれたことすらあったほどだ。


「さーて、いくか」

「レッツゴー!」

「勝つぞー!!」


着替え終えると俺の両腕に二つの花が添えられる。

何とは言わないが感触が素晴らしい。


「ホストか」

「死ね」


男達は無視しよう。

その殺気は他クラスのモテ男にぶつけてもらうためにあるのであって、俺にぶつけるものではない。

ーー最初はバスケ、ぜってぇ負けねえ

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