第7話 親父

ファミレスにて、かなりの量を頼んだ俺たちは楽しくおしゃべりしながら平らげていった。

周りのお客さんは女の子なのによく食べるわねぇとか、運動部凄いーと話している。


「相良専務!こんだけ飲んでまだなんか食べる気ですか!やめましょうよ」

「うっせぇな!親父の威厳を見せんだ邪魔すんな!」

「なんの威厳ですか!」


相良専務?

どこかで聞いたことあるがまさか...


「あ、パパ〜、おかえり〜」

「おかえりパパ〜、パフェ頼んでいい〜?」

「ママにお土産買ってこうね〜」

「いいぞ!なんでも食え!」

「やった!」


親父でした。

ったく、柚葉いるからって、カッコつけやがって。


「親父、財布は大丈夫なのか?」

「翔、大人には営業というものがあってだな。

これも営業だ」

「ウインクやめろ」


最近頭のてっぺんが薄くなり始めているおっさんのウインクはキツすぎる。


「英玲奈ちゃん、このバッシュどう?」

「水野さんにはこのウェア」

「おじさんお酒くさい」

「ごめんねー、ちょっと失礼」


鼻をつまむ英玲奈。

親父は苦笑いでトイレに立つ。

ちなみに親父はスポーツメーカーに勤めている。


「このウェアくれたり?」

「感想聞かせてくれるなら」

「感想教えます!」

「契約成立!」

「バッシュよりウェアのが良いかな」

「じゃあそうしよう」

「契約成立!」


親父はこうやって、全国の高校や大学と契約し、専務までかけ上がっていった。


「翔、俺は天才かもしれない、あと皆可愛いな!

特にあやせ、七瀬、夏葉!」

「親バカすぎる」

「父親は娘には勝てんよ、絶対」

「ママにも勝ててないけどな」

「真昼はお前、天使だろ。

敵うわけない」

「そうですね」


この親父の溺愛っぷりは凄まじく怒るなんて絶対しないし、なんでも買い与えるほどだ。

まぁ気持ちは分からんでもないがな。

けど...

あや姉に月7万のお小遣いはやりすぎだと思う。


「たっけ、落ちるかな」

「だから言ったじゃないですか!」


5万を超えてた気がするが見なかったことにしよう。

親父、アンタの男気見せてもらったよ。

会社で頑張ってな。


「翔、柚葉ちゃんと初めての夜だな」

「あぁそうだな」

「初めての夜だな!」

「楽しみだよ」

「初めての夜だな!!」

「何回言うんだよ!」


家に帰り、ゆっくりとリビングでテレビを見ていると親父が隣に来る。

なんだ、今日は修学旅行の夜か!?


「何するんだ?」

「ゲーム」

「王様ゲームか!」

「普通にPS5だよ!」

「翔!お前をそんな男に育てた覚えはないぞ!

もっと男らしいゲームをやれ!」

「男らしいゲームってなんだよ!」

「ゴニョゴニョ」

「やるか!」


そんなの出来るわけないだろ!

つーか、そんなのカップルでも早々やらんだろ、普通!


「マロン、翔は意気地なしだ」

「にゃ」

「猫語で喋れよ」


親父は飼い猫のマロンを持ち上げる。

俺はため息を吐いた。


「ニャン、ニャ、ニャニャン!」

「テメェこの野郎って言ってるらしいぞ、それ」


マロンが何を言ってるかわかるアプリが俺のスマホには入っている。

ほぼ合っていないという噂だが。


「え?」

「ッシャー!!!」


驚く親父にマロンは爪を立て、顔を引っ掻いた。

親父を睨みつけ、威嚇する。

もしかしたら合っているのかもしれない。


「親父、嫌われたぞ」


俺の膝に乗り寝転がるマロン。

俺はナデナデした。

勿論俺は猫派だ。


「真昼にはこれが聞いたのに」

「ママが変わってるだけだろ」

「そんな!真昼〜」

「パパはかっこいいよ!

けど、しょーくんにはそうなってほしくない!」


キッチンにて、手を動かすママは苦笑い。

ウチのママは近所でも有名な美人妻で38歳とかなり若い。

親父とは4歳差だ。


「何をやらかしたんだ」

「出来ちゃった結婚」

「えぇ...」


知りたくなかった...


「良いお湯だったぁ、次、どうぞ」

「あ、あぁ」


落ち込んでいるところに湯上がり柚葉が現れる。

可愛い、そして、えっちだ...


「しょーくん、入ろー」

「あや姉脱ぐの早すぎ!親父いるんだぞ」


ママと同じく台所にいたあや姉は上をブラと一緒に脱ぎ捨て、抱きついて来た。

ぷるんとかなりおっきいおっぱいが揺れる!


「あ、忘れてた、ま、いいや、パパ好きだし」

「あやせ...パパも入ろうかな!」

「それは犯罪」

「えぇ...」


親父がキモいのは認めるがバッサリすぎるだろ...

しかも、犯罪って...


「早くね」

「あぁ」


柚葉はすれ違い様に呟く。

これぞ、アオハルだ。

俺の憧れた最高の。

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