第4話 女子も大差なし

「次、体育かぁ」


今は数学の授業中。

アタシ、柊柚葉はバレないようにBluetoothイヤホンを片耳につけ、受けている。

こういう時ロングは便利だ。

絶対にバレない。


「ライブ行きたい」


ちなみに今聴いてるのは人気のKPOP。

アタシはこのグループが中学の頃から大好きで暇さえあれば、グッズを買いに行ったりしている。

今度は翔と行ったりしてみたい...


「柊、柊」

「何」


隣の席のアホ《関》が話しかけてくる。


「しりとりしようぜ」

「まぁいいけど」


何がしたいんだろう、このアホは。

こんなんだから毎回赤点ギリギリなのに。


「ゴリラ」

「ライブ」

「ブタ」

「タイ」

「イブラヒモビッチ」


なんで急にサッカー選手。

ヘディングのしすぎか?


「チンパンジー」

「じ、ジョコビッチ」


アンタ、絶対名前しか知らないでしょ。


「ちんすこう」

「ウナギ」

「ギフテッド」

「ドリル」

「ルナ」


ルナはなんかのキャラクター。

なんだっけな、アレ。


「ナン!」

「ばーか」


アタシは口をゆっくりと動かし、ニヤニヤした。

ホント、バカすぎ、笑える。


「関、柊、ここの問題答えろ」


は?

なんでアタシまで?


「先生そりゃないぜ!俺は柊と楽しくおしゃべりしてただけだぜ!」

「アタシはテキトーにあしらってただけです」


悪いのは全部関、アタシは一ミリも悪くない。


「よーし、わかった、報告しとくわ」

「ここはこう!」


報告とは顧問のレナ先生にということだ。

アタシはパパッと計算し、黒板に正解を描いた。

実はアタシ、成績がかなり良い。

 

「柊、出来るなら姿勢も良くしろ」

「はーい、けど今日お腹痛いから無理でーす」

「そ、そうか」


女子はこの手で逃げれる。

だが、男子は...


「先生!こうですよね!」

「全然違う!」

「先生腹が痛いから無理です!」

「ふざけるのもいい加減にしろ!廊下に立ってろ!」

「そ、そんな差別だ!」

「早く!」

「はーい」


逃げれない。

でも、女子にはもっとめんどくさいことがあって...


「バスケなんて嫌いだぁ!!」

「わかる、めっちゃ男子みてくるよね」

「ウチ、大きいから揺れちゃうんだよね」


早瀬がブラを曝け出しながらベンチへ寝転がる。

そう、おっぱいが大きい女子はバスケやテニスで絶対に視線を集めてしまうのだ。


「見学するわ、女の子の日〜」

「いや絶対嘘じゃん」

「ハゲだからバレません〜」


こうやって見学する奴も多い。


「柚葉、何と葛藤してんの?」

「揺れて、みられるのは嫌なんだけどさ、どうしてもレイアップやりたい」


今だけおっぱいだけを小学校時代に戻せる秘密道具が欲しい。

ーーバスケめっちゃ好き


「ちょっとジャンプしてみ」

「やっば」


軽く飛ぶだけで弾けるように揺れる91のおっぱい。

ママは良いじゃん、おっきいとモテるとか言って、揉んでくるがアタシはもう少し小さい方が良い。

というか、ママがお風呂のたびにマッサージと言って揉むからおっきくなったんじゃないかまである。

もう一緒に入るのやめようかな。


「普通のじゃとても無理だね」

「はぁ」

「これでも揺れるからなぁ」


アタシはため息を吐きながらホックを外し、地味な黒のスポブラをバッグから出す。


「柊はお尻も大きいよね〜」

「脱がすなバカ!」


早瀬がズボンを下ろし、92まで育ってしまった自慢のヒップを揉んでくる。

このヒップは綺麗だから大好きだ。


「ショーツまで行ったら蹴るからな」

「はーい」


睨みつけると早瀬はショーツから手を退ける。

昨日処理してないから同性でも見せるわけにはいかない。


「早瀬〜早く着替えろよ〜」


アタシはお返しにズボンを思い切り下ろした。

女子だけの空間だと女子も結構ガキっぽいのだ。


「全部行くのはやりすぎだろ!」

「アンタのスピードじゃ無理」

「離せバカ!」


早瀬の後ろ蹴りをかわし、足を掴むと早瀬は前を隠す。

前より隠すのは真ん中なんだけど。


「はーい」

「覚えとけよ」


ニヤついて離すと早瀬はサッとズボンと一緒に履き直す。


「10点目!」


そして、体育が始まると今日は絶好調だった。

開始10分で5回目のレイアップ成功。

最高に気持ちいい!


「ナイス柊!揺れまくり〜、ほれ気持ちいいかぁ?」

「や、やめろバカ!」

「ちょ、それはやばいって!」


抱きついて来て、激しく揉むのはさっきのお返しを企んでいただろう早瀬。

アタシは思い切り、背負い投げをした。


「いった〜、けつやばい〜」


背負い投げを食らった早瀬はケツをうち、ケツをさする。


「あ、めっちゃエッチ」

「しー!」


幸い先生達は来ていない。

ニヤつく早瀬。

理由はアタシのスポブラがずれて、乳首が透けているから。

アタシは顔を真っ赤にして、早瀬に身体を近づける。


「わかった、わかった。見えてないよ、柊とアタシ以外には」

「男子のいないところだけだろ、普通」


アタシは絶対に見えないように直す。

膨らみ始めた小五の時、リトルで翔に見られそうになった時のように。

よかったぁ、リトルで野球やってて。

早着替えはお手のものだ。


「柊、そのおっぱいは誰に揉まれたいの?」

「好きな人」

「ふーん」


視線を逸らして明後日の方向を向きながら呟く。

早瀬はニヤニヤだ。

ーー翔にしかあげないもん、このおっぱいは。

翔のために大きく綺麗になるように毎日欠かさずマッサージしてるし!


「あ、翔くん〜」

「早瀬先輩、柚葉」


そして、昼休み、廊下で翔と絵里ちゃん、英玲奈ちゃんに出会した。

早瀬が手を振る。


「何食う?」

「ラーメン」


アタシはそっけなく答えた。

朝、喧嘩した手前、なんかむず痒い。


「一緒だな」

「うん」


嬉しい。

翔と食べるものが一緒なんてこれから毎日だろうけど、こんな些細なことが最高に嬉しい。

アタシは小さく頷く。

ーー翔と一緒♡


「皆、一緒にしようか」

「そだね」

「賛成〜」


アタシだけが翔と一緒が良いのに...

はぁ。



そして、このグループでの昼食が始まる。

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