第3話 屋上にて

「ブレザー着てらんねぇな」


教室に入ると4月にしては少し暑かったがエアコンをかけるほどではない。

これも地球温暖化のせいだろうか。

年々記憶が上がっている気がする。

俺は椅子にブレザーを掛け、腰を下ろす。


「あっつ〜」


どうやらお隣さんも暑いようだ。

まぁ、お隣さんの場合はさっき走ったのもあるだろうが。

英玲奈は俺と同じようにブレザーを椅子にかけ、ネクタイを緩めると下敷きでパタパタとワイシャツの中に風を送る。

ついつい見ちゃうんだよなぁ、この動き。


「そんなに見てもブラがちらっとかないかんね?

中、Tシャツ着てるし」


ニヤつく英玲奈。

チッ、男子生徒の密やかな楽しみを奪いやがって。


「あー、も・し・か・し・て〜。

私のブラが気になんの〜?

えっち!」

「ハッ、どうせ黒のスポブラだろ、そんなもんあや姉、七瀬、夏葉で見慣れてるわ」


俺は鼻で笑い飛ばす。

運動部は朝練後はスポブラが多いとあや姉から昔聞いた。

ちなみにあや姉はバレー、七瀬は陸上、夏葉はソフトをやっていて、三人とも普通に俺や親父がいても脱ぐ。

ブラとか、どうせ洗濯籠に入れる時に見られるから何も感じないとか言って。


「お!こ!さ!ま!

あのね、それはダサい女。

大人な女は見られてもいいブラに変えるの」

「ほー」


あや姉は三年生の中でもかなりイケてる方なんだがな。


「水野のブラは可愛い黄色よ、旦那」

「水野〜、英玲奈がお前のブラ暴露してるぞ〜」

「英玲奈てめぇ!殺すぞ!」


水野海はこの通り、ヤンキーだ。

身長は172センチ、ヘアスタイルは紫のロング。


「相良、ちょっと来い」

「うぃーす」


英玲奈と肩を組んだ水野は俺を誘い、廊下に出ていく。

ここは大人しく着いて行くとしよう。


「英玲奈〜、アタシのブラを暴露したんだ。

お前は公開な。

大丈夫、一瞬だ」


連れて来られたのはこの時間誰も来ない屋上扉の前。

英玲奈は身体を震わせるが水野は肩を組んだままだ。


「ネクタイからな」


声を踊らせ、英玲奈のネクタイを外す水野。

めっちゃえっちなんだが!?

俺はゴクリと唾を飲む。


「スカートから出しまーす」

「あらぁ、可愛いお腹だねぇ」

「うっさい!」


スカートから出されたワイシャツを上に上げ、お腹を晒す水野。

英玲奈の顔は真っ赤だ。

めちゃくちゃ触りてぇ!


「やっぱ、ブラよりパンツ!」

「え!?」


ッシャー!!!

ナイス水野!

俺は心の中でガッツポーズする。


「相良、ありがたく思えよ!」

「おぉ!」


パッと捲られるスカート。

俺は思わず声を漏らす。

こんな幸運があって良いんだろうか!


「残念でした〜、スパッツ履いてます〜」


自分でスカートの先っちょを持ち、見せびらかす英玲奈の表情はばーか、騙された、ホント単純とでも言うようにムカつくほどニヤついている。

クソ!!

こんなもん見てもなんも滾らん!

さっき走った時はもう少し長いのを履いていたから気づかなかった!

クソ!


「ブラの色くらいじゃ、そんな怒らねぇよなぁ

あれ、相良、めっちゃ期待した顔じゃん。

もし見れたらシコろうと思ってたろ」


水野もニヤついている。

ちなみに英玲奈はもうスカートの中にワイシャツを入れ、正している。

あとはネクタイをするだけだ。


「水野の可愛い黄色のブラを今日のおかずにするかなぁ」


これで水野はある程度動揺するだろう。

夏葉はこれでめっちゃ動揺するからな。


「つけてねぇよ?」

「は?」


動揺なんて全くせず、キョトンとする水野。

まさか、英玲奈、貴様!


「黄色の可愛いブラつけてるのは柔道部の草野さん」

「男子に教えるわけねぇだろ、ばーか」


oh!nooooo!!!!!

マウンテンゴリラの裸体(上半身)が脳裏に焼き付いて離れねぇぇぇぇぇ!!


「バイビー」

「じゃあなー」

「へ!?」


地面に手をつき、脳裏に焼き付いてしまった特級呪物を消すため、必死に前に読んだ週刊誌のグラビアを思い出す俺を見た2人は笑いながらドアへと歩いて行く。

だが、ここで定番のイベントが訪れる。

そう、風!

風の悪戯だ!

水野こと、水野海のスカートが舞い上がった。

緑色のえっちなパンティが見えた。

うーん!めっちゃえっち!


「見たか!?」

「見てない」

「そう...」


水野は急いで隠すが時既に遅し。

俺は嘘をつき、水野の頬が赤くなっているのを見つめる。

水野は何故か信じた。


────────────────────


「見られた!?見られたよな!?」


アタシ、水野海はトイレの個室に入り、勢いよくドアに寄りかかる。

すげぇ音が鳴り響いたが今は誰もいないからセーフだ。

そんなことより、見られちまった...

相良に。

めっちゃ好きな相良に!!


「スパッツこれからは履こ」


腰を下ろし、用を足しながら見られてしまったパンツを見つめる。

この緑の少しセクシーなパンツは結構お気に入りのやつだ。

よかったぁ、ダサいやつじゃなくて。

それだけがせめてもの救いだぜ。


「席ちけぇんだよなぁ」


アタシの席は英玲奈の隣。

イケメンな相良の横顔をさりげなく見れるから担任めっちゃナイスと思ったけど、今はナイスなんて思えねぇ。


「教室行きたくねぇ」


廊下を歩きながら呟き、大きなため息を吐くとホントに一目惚れしてんだなぁと気づく。

ーー見られるには順序ってもんがあるだろうよ、初体験の時とか。

マジ最悪だぜ。

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