第10話 同級生としての時間

 しばらく3人で会話しながら歩き、学校に着いた。

「私達、全員同じクラスだから途中で別れなくて済むのいいね」

「途中で別れるのは寂しいもんね」


 昨日は空いていた私の右斜め後ろの席、時雨が座っている席だ。


「時雨ちゃんって何かハムスターみたいだよね」

「どういうところがハムスターなんですか?」

「ちっちゃいところとか……可愛いところとか」

「小さいって言わないでください。結構コンプレックスなんですよ」


「よしよし、小さい時雨ちゃんは可愛いね」

「馬鹿にしてますよね」

「してないよ」

「……ふふっ」

「……はははっ」

「2人だけで通じあってずるい」

「結月は家でいっぱい通じあってるでしょ」


 母親を失ってかなり気分が落ち込んでいると思っていたが、今はこうして一緒に笑えている。

私も悲しそうな時雨は見たくないし本当に良かった。


「今日3時間目に体育あるじゃん、やったー」

「授業嫌いなんですか?」

「嫌いじゃない人なんてそうそういないでしょ」

「確かにそうですね。私も別に好きではありません」

「私もちょっと嫌かな」




「2時間が長かった~」

「やっと体育だね」

「一緒に更衣室行きましょうか」


「今日は何するんだっけ?」

「楽しみって言ってた割には内容把握してないんですね」

「体動かすのが楽しいから別に何をするかは問題じゃないの」


「そういえば、時雨って運動できるの?」

「……人並みには」

「結月はめちゃくちゃ運動できるから羨ましい。私は運動好きだけど結月ほど動けないんだよね」


 更衣室を出て廊下を生徒玄関まで歩き、靴箱までやって来た。


「あっ、そういえば、さっき体育で何するか聞けなかった」

「バスケです」

「それ体育館でやるやつだよね」

「……そうでしたね」


 廊下で他のクラスメイトと会わなかったので気づかなかった。

靴箱から見える時計がチラッと目に入った時、その針は授業開始の2分前を指していた。

更衣室で話をし過ぎたか……。


「急がないと遅刻するよ」

「ほんとだ!? 後2分しかない!?」


 体育館の方へ向かって3人で廊下を全力疾走する。

「ごめんなさい……私のせいで」

「バスケなの知ってて気づけなかった私にも責任あるからそんなに気にしなくていいよ」


「2人そろってやらかしてるね」

「そういう伊藤さんもせめて体育の予定くらいは把握しておいてください」

「はーい」



 


 



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