第11話 体育の時間

「ああー、着いたぁー」

「はあっ、はあっ」

「危なかったね」


 もう既にほとんど人がそろっていた列に並び、なんとか授業開始に間に合った。


 準備体操をして、いよいよバスケをする時だ。

男女で別れてチームを作り、対戦する。


「西園寺さん、一緒のチームですね」

「時雨~」

「私も一緒だよ」

「伊藤さんもですか」

「私達、運命の糸で繋がってるね」


 今回は1チーム5人ということになっている。

私と時雨、そして紗理奈。

後2人はただのクラスメイトである斎藤咲楽さいとうさくら石田麻衣いしだまいだった。どちらも関わりの無い人だ。

「今回はよろしく~」

「うぇーい、よろしく~」

「よろしく」

「よろしくお願いします」

今回協力する仲間と軽い挨拶を交わし、コートになる場所へ移動する。


「ジャンプボール誰がやる?」

「ここは結月が良いんじゃないかな」

「背も高いし、運動神経も良いし、私も賛成です」

「私達もそれでいいと思います」


 始まりのブザーが鳴り、私の左側に立っている審判役の生徒がボールを高々と真上に投げた。


「高くない!?」

「……っ!」

相手側があまりにも高く上がったボールに驚き、一瞬反応が遅れた。

その状況でも冷静さを保っていた私がジャンプボールを制した。


 こちらの陣営へ飛んでいったボールをまずは紗理奈が回収した。

「時雨! パス!」

「はいっ」


 しっかりドリブルしながら前へ進んでいく時雨。

150ちょっとくらいしか無いその体で頑張って動いているところがとても可愛い。




 しばらくお互いに点を全く入れられない展開が続き2分。

ようやく戦局が動き始めた。


「斎藤さん!」

時雨から斎藤さんへとボールが渡り、次のパスを受け取るために敵が居ない場所へ走る。


「西園寺さんっ!」

斎藤さんも私の考えを理解して、私に向かってパスを回した。

「ナイスパス!」


 そのまま前方の3人を振り切り、シュートを決めた。

「結月ナーイス」

「いえーい」

「いいシュートでしたね」

「……私、全然動けなかった」


 先ほどの動きで全く活躍が無かった石田さんはおそらく運動が苦手なのだろう。

横から足を引っ掻けたら100%転ぶ。私から彼女はそんな風に見えた。


 その後、お互いに1度も点を入れられず、2対0で試合が終了した。


「今の勝てたのは結月のおかげだねー」

「そうですね」

「……西園寺さん、凄いです」

「私は別に……、斎藤さんのいいパスがあったからだよ」


 西園寺さん……かっこいい。

今の関係になり、初めて西園寺さんのことを意識するようになったので、より西園寺さんの完璧さが伝わってくる。


 私にこの人のメイドが勤まるんですかね?






 



 


 

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