第9話 新たな日常

「ごちそうさまでした」

「ごちそうさまー」


「良い朝食でした」

「凄く気に入ってるね」


「食べていると幸せが溢れてくるっていうか……そんな感じです」

「食レポ下手だね」

「経験が無いので……」

「経験ある人の方が少ないと思うよ」

「ですよね」


「そういえば、食リポと食レポって何が違うんだろ」

「こういう場合では食リポが正しいと思います。食レポのレポとはレポートのことを指しています。そしてレポートとは論文などを指す言葉です」


「さっきの私、間違ってたんだ」

「そうなりますね」

「言ってよーっ」

「別に指摘するほどのミスでもなかったですし……」

「まあそっか、誰も気にしてないよねそんなこと」

「気にしているとしたらテレビ局関係の人間位でしょうね」



「朝食食べ終わったし、歯磨きしに行こっか」

「はい」


 まだ2日目だが、もう廊下を移動することにも慣れてきた。

まだ西園寺さんが居ないと迷子になりそうだけど……。


「時雨は朝の歯磨き、食前にする派? それとも食後にする派?」

「食後の方がいいらしいので私は食後派です」

「私も同じ理由」


 2人で歯磨きを済ませ、そろそろ登校する時間だ。


「西園寺さんって車とかで登校しないんですね」

「体動かす機会って私はあんまり無いから登下校くらいは、ねっ」

家の中でも結構動いている気がするが、健康に良いことは間違い無いし、指摘しないでおこう。


「お嬢様、時雨ちゃん、いってらっしゃいませ。エスコート頑張ってね、時雨ちゃん」

岩永さんが私達を送り出す挨拶をした後、すれ違う瞬間に私に小声で私に語りかけた。


 エスコートって何?


「こうして一緒に歩ける日が来るなんてね」

「嬉しいですか?」

「もちろん。時雨は?」

「私も嬉しいです」


「あの」

「ん?」

「エスコートって何ですか?」

「……岩永さんになにか吹き込まれた?」

「はい、屋敷を出る前に」

「別にそんなこと考えなくていいよ」



 エスコートの意味を聞くタイミングを見逃してしまった。

仕方ない、意味は後で調べることにしよう。


「結月~、おはよっ」

「おはよう、紗理奈」


 後ろから話しかけてきたのは昨日、時雨の母が急死したことを私に話した紗理奈だった。

「横のその子は……星宮さん?」

「はい、星宮時雨です。確か、伊藤紗理奈さんでしたっけ。こうして話すのは初めてですね」

「結構かしこまった口調だね。同級生なんだからタメ口でいいでしょ」

「でも、敬語ってなかなか抜けないんですよね」

「なら別に無理してタメ口にしなくていいよ。好きな口調で話してね」


「ところで、結月と時雨ちゃんっていつの間に仲良くなったの?」

この人も早速私を時雨ちゃんと呼び始めた。

私的にはこういう人は親しくしてくれるのでむしろありがたい。


「昨日、行く当ての無い時雨を家で雇ったの」

「はえ~、社長令嬢はやることのスケールが違うね」

「西園寺さんのおかげで本当に助かってます」


「雇うって、メイドとかそんな感じ?」

「うん、そんなところ」

「まだ仕事は今日の放課後に先輩から教わるところからですけどね」

「頑張って、時雨ちゃん」

「はい、頑張ります」









 


 

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