第8話 2人で迎える朝

~翌日の朝~

今日からメイド長の岩永さんの代わりに、私が西園寺さんを起こしに行くことになっている。


 これまでより少し早く設定していたアラームで起床し、学校の制服に着替える。

私は結構朝に弱いタイプだけど、ベッドがふかふかで枕も低反発のかなりいいものであったことで、ばっちりの目覚めだった。

これほど質の良い睡眠は生まれて初めてだと断言できる。


 一応、もう起きていて着替えの途中だったりすると大変なので、まずはノックをして返事が無いか確認する。


 何度かノックしたが、中から反応は全く無かった。

「失礼します」

小声で一応失礼しますと言っておいて西園寺さんの部屋に入る。

まだぐっすり寝ているようだ。


「お嬢様、起きてください。もう朝ですよ」

「……んーっ、ああっ。おはよう、時雨」

「はい、おはようございます」

「起こしに来てくれてありがとう」

「これくらいなら毎日でも大丈夫ですよ」


「朝食はメイドさんが持ってきてくれるんでしたよね?」

「うん」

「では、今のうちに着替えておかないとですね。私は一旦自分の部屋に戻ります」

「いや、別にそんなことしなくてもいいよ」


 やっぱりこの人、なんだかおかしい。

「着替えを見られることに抵抗とか無いんですか?」

「時雨には全く無いかな、抵抗」


「まだ私達の関係、2日目ですよ」

「もう1日経ってるじゃん」


 西園寺さんと私は価値観がずれすぎている。

こんな調子でこれから関係は続けられるのだろうか。


「時雨、こっち向いて」

「はい」

「私のパンツ!」

「見られると見せるは結果が同じでも意味合いが全然違いますよ!?」


 西園寺さんが着替え終わってしばらく話していると、部屋のドアがノックされた。


「どうぞ」

「おはようこざいますお嬢様。朝食を持って参りました」

「ありがとう」

「ありがとうございます」


「それでは、後程参りますので、ごゆっくりお楽しみください」

「はーい」


「私が普段食べてる朝食は時雨の口に合うかな?」

「どうでしょうね」

さっきのメイドさんによって机に並べられたのはフルーツが添えられたフレンチトーストだった。

たしかホテルの朝食もこんな感じだとどこかで見たことがある。


「いただきます」

「いただきます」


「どう? 美味しい?」

「はい、とても美味しいです」

「よかった」

「私もこんな料理出来るようにならないとなんですかね?」

「そうなったら毎日時雨の料理が食べらるんだ、最高だね」

「毎日はちょっと大変そうですけどね」


「時雨が料理上達したら私にも食べさせてね」

「頑張ります」







 

 

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