第3話 四天王、現る?

「むっ、俺は一体……?」


 エルミードが朝、気が付いた時、彼はいわゆる東方のオフトゥンなる道具の中にいた。

 風呂場で気持ちよさのあまりウトウトしたことは覚えている。

 その後はどうやら、黒い腕が布団まで運んだらしい。


「やはりルドル・ハイレディンは凄い者だったんだな」


 霊の手にまで認められているというのはたいしたものである。

 と、同時にラドラまで尊敬しているのは違うのではないか、そういう思いも抱く。


 ともあれ、睡眠不足が解消されたことにより、エルミードは早速活動を開始する。

「……四天王とやらに会いに行くか」


 カンウは髭の手入れをするため、理容師のところに行ったので、一人で行動するチャンスだ。

 街で情報を収集すると、一人は街はずれの教会を拠点として、ゴッド教国から来る魔物共と戦っているという。


「ゴッド教国の魔物?」

「はい。ゴッド教国は魔物を使うのです」

「そうなのか……」


 ゴッド教国は神の教えを広めている国である。

 そのため、魔物がいるというのは不思議なことと思えた。

 それも含めて、四天王の1人と会う必要がありそうだ。


 そこにいる、と言われた教会へと向かった。


 古びた教会である。

 200メートルほど向こう側に再建されたらしい別の教会がある。恐らく古いので捨てられたのであろう。

(こんな古いところにはいないよな。新しいところと間違えて聞かされたのだろうか?)


 どうやら間違えたらしい、と新築の教会に向かおうとした途端。


 雷が鳴った。


「これは!? 明るかった空が急に真っ暗に!?」


 真っ暗になったところに突然松明の火がついた。教会の入り口へと列のように伸びていく。


(これは……とんでもない魔物が待ち受けているのかもしれない)


 エルミードは剣と十字架を持って、慎重に教会へと足を向ける。

 いる分には邪魔だが、カンウがついていれば、と内心で少しだけ舌打ちをした。


 教会に入ると、祭壇の上に棺が置かれてある。

 その棺の下にある花々がメラメラと音をたてて燃え始めた。


 このままでは棺も燃えるのでは。

 そう思った時、棺に落雷が落ちる。

「室内なのに!?」

 驚きつつも落雷の衝撃は大きい。エルミードは思わず飛びのいた。


 もうもうと煙が舞う中、棺の上に人影が見える。


「き、貴様、何者だ!?」

 精一杯平静を装って誰何する。

 男は、低音のバリトンボイスで渋く答えた。

「……おまえか、ラドラ将軍の差し向けたお気に入りというのは」

「……は?」

 エルミードが思わずあんぐりと口を開ける。

「おまえは、ラドラ将軍の部下かと聞いたのだ?」

「そ、そうですが?」

「そうか。よくぞ参った」


「よ、よくぞ参ったって……」

 エルミードはただ、ただ絶句する。

(こいつはいつも、人と会う度にこんな登場をするのか?)


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