第10話 盗賊団発見!
サラーヴィーの指示によって、エルミードは同僚の近衛兵を五人連れて山に登ることになった。
山とは言っても、丘を少し高くしたようなものであるし、なだらかなので登るに困ることはない。
さすがに馬を連れていくことはできないが、およそ半日で登り、王国と帝国の国境を見渡せる場所までやってきた。
「むむっ!?」
村民達の言う通りであった。
先に帝国領を確認したエルミードは、幾つかの壊滅した集落を目にし、慄然とする。
(盗賊ども、帝国から活動資金を出させているくせに帝国領まで襲っているとは。兄上は何をしているのだ)
怒りがふつふつと湧いてきた。
その後、改めて王国領を見ると、こちらも焼け落ちた集落と思しきものが散見される。
どちらも酷いものだ。
(この盗賊共は、エンパイア帝国のためにも全滅させる必要があるだろう)
同僚達を見ると、全員怒りに燃えているようだ。
「おのれ、盗賊ども……」
「あれだけ多くの村を破壊しているとは、とても許せん」
「あ、あれを!」
近衛兵の1人が指さした。
見ると王国側の平原地帯を動く五十人くらいの集団が見える。
この国境をそれだけの人数で動くものは盗賊団以外にはありえないだろう。
集団の向かう先には小さな集落のようなものが見えた。
「このまま放置しておくと、やられてしまう!」
止めなければいけないのは火を見るよりも明らかだ。
「よし、誰かサラーヴィー様に伝えてこい! それ以外の四人と俺で止めに行くぞ」
エルミードが叫んだが……。
「何? おまえ新入りなんだから、おまえが伝えに行けよ」
近衛兵の1人が文句を言ってきた。
エルミードも負けじと言い返す。
「今見ている様子は、この場所に立ったから見えたんだぞ? この場所を教えたのは誰だ?」
「……おまえだ」
「だったら、俺が行くのは当然じゃないか!?」
「分かった。カンウ、一番弱いうえに一番センスのないおまえが伝えに行け」
強い弱いはともかく、このお面でセンスも何もないように思えたが、そこには厳然たる序列があるらしい。
カンウと呼ばれた近衛兵はぶつぶつ言いながら、本隊へと戻っていった。
「よし、行こう」
近衛兵四人とともにエルミードは山を下りていく。下で馬を拾うと、先程集団を見つけた方向へと馬を飛ばしていった。
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