第6話 面接なのに実技披露

 面接室はそう広くない。

 大きなソファがあり、そこにラドラが座っている。


「受験番号26番のエルミード・タトルと申します」

「おぉ。これは中々澄ました美少年じゃのう。良き事良き事、ホホホホホ」

 何がおかしいのか分からないが、ラドラは笑っている。


 そのうえで、経歴書を読み始めている。


「ほほう。そちはイーストシティの出身でおじゃるか。麿もそこから近いでおじゃるよ」

「そうなのですか?」

 もちろん、出身地はデタラメだ。

 まさかエンパイア帝国出身と書くわけにいかないので、一度だけ訪れたことのあるイーストシティの名前を書いただけである。

「左様。ノースシティの生まれでおじゃる」

(全然近くないだろ……)

 それぞれ広いキングダム王国の東の端と、北の端だ。数百キロは離れている。


「……自信があるのは剣と魔法。ほほう、双方に自信があるとはたいしたものでおじゃ」

「ははっ。お目汚しになることをお許しいただければ、剣技を披露することも可能でございます」


 チャンス到来。

 剣技を披露し、もしラドラが油断したなら一気に殺害して逃げてしまっても良い。


「見たいでおじゃ! 見たいでおじゃ!」

 ラドラは子供のように目を輝かせる。


「ハハッ、それでは……!」

 エルミードは立ち上がり、剣を抜いた。

「ハッ! トウッ! でやぁっ!」

 掛け声とともに鋭く剣を突き出す。

 そうしながら、ジリジリとラドラとの距離を詰めていく。


「……貴様! 大将軍様の御前で剣を抜くとはどういう了見だ!」

 突如後ろから叫び声がした。

 見ると、先程のサラーヴィーが部屋の入り口近くまで来ている。


(しまった。引き続き警戒されていたのか……)


 エルミードは自らの迂闊さを呪った。

 サラーヴィーは自分を怪しいと思っていたのだろう。だから、部屋に入った後も注意して見ていたようだ。


「ホホホ、サラーヴィー。案ずるには及ばぬぞよ。何せ麿が見たいと言ったのじゃからのう」

 ところがラドラが助け船を出してくれた。

「し、しかし……、危険でございます」

「ホホホ、サラーヴィー。そちは本当に心配症よのう。良きかな、良きかな。ならば、麿とともにタトルの剣技を見守ろうぞ」

「ははっ」


 観客が増えた。


「さあ、続けるのでおじゃ」

「は、ははっ……」


 サラーヴィーの視線が刺さるようだ。間違いなく自分を疑っている。

 もし、この状況でラドラに手を出そうとすれば間違いなく彼に殺されるだろう。

 そう考えると、あえて頑張る意味があるのか。

 段々馬鹿らしくなってきた。


 そもそも。


(本当に、このラドラが帝国を脅かす力の持ち主なのか?)

 先ほどの疑問もまた浮かび上がってきた。


 外見、性格、雰囲気、どこをどう見ても、たいした存在には見えない。


(これは、悪い冗談なのだろうか……)

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