第5話 いざ、面接試験へ
志願者の中から殺気を感じたと言った長身の男……サラーヴィーと名乗ったその男は鬼のような顔つきで、厳しい視線を居並ぶ者達に向けてくる。
「手遅れか」と思いつつ、エルミードは精一杯平静さを装い、気を静めようとする。
サラーヴィーがエルミードの右側を歩く。心臓の鼓動が自然と早くなった。殺気を目ざとく捉えるような男である。ひょっとしたら、この鼓動すら聞こえるかもしれない。
緊張が高まる中、サラーヴィーが通り過ぎた。
一瞬、ホッと息をつきそうになるが、それが狙いかもしれない。
エルミードは不審に思われることがないよう、サラーヴィーの後ろ姿に視線を送る。
そのまま、一周した。
サラーヴィーはアドラの前に跪く。
「申し訳ございません。彼奴め、感づかれたと気づいて殺気を押さえつけたようです」
エルミードは内心でホッと息をついた。
どうやら殺気を隠すことに成功したらしい。
ラドラはにこやかにお歯黒を見せて笑う。
「サラーヴィー、気にすることはないでおじゃ。ここは麿を慕って集まった者達ばかり。麿に対して殺意を抱くものはおらぬでおじゃ。お主の麿を想う気持ちは有難きなれど、考えすぎでおじゃ」
「ハハッ、このサラーヴィー、まだまだ未熟でございました」
ラドラの言葉に、サラーヴィーは跪いた姿勢のまま頭を下げた。
(こいつ、本当にどうしようもないのではないか?)
エルミードは呆れてしまった。
サラーヴィーの言葉には身の毛もよだつ思いをしたし、実際、間一髪で気づかれずに済んだと思っている。
それを、この肥満体の男は「気のせいだ」と簡単に斬って捨ててしまった。
もちろん、エルミードはそれによって助かったのであるが、「こいつは馬鹿なのではないか」という思いは強くなるばかりだ。
「気を取り直して、直ちに試験を開始するでおじゃ。麿はこちらの部屋におるゆえ、縁のある者はまた会おうぞ。ホホホホホ」
そう高笑いの声をあげて、面接室へと消えて行った。
国王と大将軍の挨拶が終わり、一人、また一人と志願者が面接室へと入っていく。
やがて、次がエルミードの出番になった。
サラーヴィーが近づいてくる。先ほどのことがあるため、どうしてもエルミードの緊張が高まる。
しかし、サラーヴィーはあっさりとラドラが消えた部屋を指さす。
「受験番号26番エルミード・タトル、貴様の最終面接はラドラ大将軍の部屋だ」
「ははっ!」
エルミードは敬礼をして、ラドラの待つ部屋へと入っていった。
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