第3話 国王とラドラ
翌日、キャピタルの宮殿前広場にエルミードの姿があった。
周囲には50人ほどの老若男女、さまざまな服装の者がいる。
この全てが一般試験を通過し、面接試験に臨む者達であった。
(まあ、俺が負けそうな相手はいない、な)
エルミードはざっと見回して、内心で笑う。
採用人数は10人と聞いている。
見立て違いの有能な人間もいるだろうが、このメンバーの中から上位の10人の中に入れないとは思わない。
時間になり、進行役が壇上に上がった。
「明日のキングダム王国を背負う勇者たちよ、よくぞ来てくれた! 本日、これより最終面接を行う!」
大声で啖呵を切り、その後、選考人数、選考基準などの説明がある。
「……説明は以上だ! それでは審査される2人の方をお呼びしたいと思う!」
意気込む進行役。
エルミードをはじめ、全員が息を飲んだ。
「まずは、国王陛下の御成ぁぁぁりぃぃぃぃ!」
叫び声とともに広場の端にいた軍楽団が音楽を奏でた。
それを受けて、城の方から衛兵に囲まれた白馬の若者がやってくる。歳は25歳くらい、優美な容貌に明るい茶褐色の髪はまぶしく映える。白と赤に金の刺繍をあつらえた見事な服をまとう、まさに国王と呼ぶにふさわしい男だ。
彼こそ、キングダム王国の国王キング8世である。
キング8世は、エルミードを含む50人を見下ろした。
「今年も優秀そうなものが集まったようで、余は嬉しい! あまり堅苦しい思いをせず、気楽に話してくれたまえ」
そう言って、面接室へと入っていった。
「続きまして、大将軍ラドラ・ハイレディン様の御成ぁぁぁりぃぃぃぃ!」
再度ファンファーレが鳴り、城の方から輿を抱える10人あまりの兵士が見えてきた。その輿の上に大柄の人物が乗っている。
(何っ!?)
エルミードは思わず目を凝らした。
すぐに自分の目をゴシゴシとこする。自分が見たものを信じられないようだ。
「おぉぉ、これはまたこれはまた」
甲高い声が輿の上からかけられた。
近づくにつれてはっきりと見えるのは、燃え上がるような赤い髪に、雲一つない青い空のような瞳。
そしてお歯黒に殿上眉が目立つ白皙の男。体はでっぷりと肥満しており、おそらく120キロを下ることはないだろう。
「今年もまた見事な者達が揃ったでおじゃるの~。良き事良き事、オホホホホ」
ラドラ・ハイレディンは扇子で口元を覆い、上品に笑うのであった。
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