第3話:明日香ちゃん目線。

私、天女。

名前は「明日香美比売あすかびひめ


天女って全国に伝わる天女伝説とか羽衣伝説なんかで有名よね。


私は、下界に降りる前までは欲界六天って天界に住んでたの。

天上界のうち、いまだ欲望にとらわれる天界のことをいうんだけど・・・。


本来は天上界は細部に分けられていて上に行くほど欲を離れて精神的な

無色界になっていくの。

私は天上界の中でも人間界に近い下部にいて依然として欲望に束縛される

世界に住んでたわけ。


そこは、酒池肉林の世界。


私は紗蘭宮しゃらんきゅうってお屋敷で綺麗な花に囲まれて、湖の上で

毎日二胡を奏でては、男を誘惑してたんだけどね。


ある日、天界で開かれた宴会があって偉いお役人さんの御接待のために

私も呼ばれちゃって、で、いい匂いがするから台所を覗いたら偉い人たち

が食べんるんでしょうね・・・たくさんご馳走な並んでたの・・・。


でね、そのご馳走の中に私の大好きな美味しそうな牡蠣が並んでたの・・・。

それも生牡蠣。


私、お刺身とか貝類に目がなくて誰もいないスキに、その牡蠣をつまみ食い

しちゃったのね。

そしたら、つまみ食いしてるところを厨房の料理人に見つかっちゃったのよ。


天界では盗みはご法度、たとえつまみ食いでも・・・罪が重いの。


天界にはね、蟠桃ばんとうって呼ばれる桃があってね、

この桃には不思議な力が宿っていて三千年に一度だけ実をつけるの。

その熟した実を食べるとね、不老不死になれるの。


ちなみに悟空ちゃんは、その桃食べちゃって不老不死になっちゃった

あげく仙人にまでなったの・・・その話、有名よ。


その桃って普通は天帝しか食べられない桃なんだけど・・・もし蟠桃ばんとう

盗んで食べちゃったりしたら即死刑よ、死刑。


でも桃を食べたら不老不死になっちゃうからね、死刑にもできないの。

だからどうなるかって言うとね。


次の桃の実がなる三千年の間、龍の鱗でできた鞭でしばかれ続けるの・・・

それはイヤよね。


で、私が宴会の生牡蠣を盗み食いしたってことで上の人たちにめっちゃ

お叱りを受けてね。

罪に問われる羽目になっちゃったんだけど、その上の人の中に私のお尻を

追いかけてるエロいおじさんがいたのよ。


その人「白翔李天はくしょうりてん」って人でめちゃ権力がある人で武術にも長けてるの。

その「白翔李天はくしょうりてん」さんの鶴の一声で、私は無罪放免。


でも私を無罪放免にしたことで「白翔李天はくしょうりてん」さん調子に乗っちゃって

私を無理やり自分の女にしようとしたの。


パワハラ、セクハラよね。

ウザいし、鬱陶うっとおしいでしょ。


たしかにお世話にはなったけど、それを条件に私に迫ってくるなんて

姑息で卑怯じゃない?。


しかも「白翔李天はくしょうりてん」さんって、女にだらしないんだって・・・これ友達情報ね。

で、毎晩のように紗蘭宮しゃらんきゅうにやって来て私を口説くの。


このままじゃ無理やり的なことになっちゃうのも嫌だから。


だから下界に逃げちゃおうと思って・・・。

世界は天界と下界しかないんだから行くとこって行ったら必然的に下界に

なっちゃうの。

それに下界も久しぶりだし懐かしいし・・・このさいこの期に降りてみよう

って思って・・・。


エロ親父の顔、毎日見なくて済むしね〜。


はてさて、これからどこへ降りようかと思た時、そう言えば何百年か前に

三保の松原ってところに降りたことがあったなって思って・・・。


だからもう一度そこに降りてみようと思ったの。


つづく。


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