第2話:明日香美比売(あすかびひめ)

「それで?・・・ところでおニイさん・・・あなたは?」


「ああ、俺「高坂 辰也こうさか たつや」って言います」


「歳は25歳、現在独身、趣味は山登り、カメラマンもやってます・・・

今日も富士山に登ろうと松原まで来てたんだけど・・・」


「そこまで聞いてないけど・・・まあいいわ」

「ふ〜ん、そうなんだ・・・タツヤ君ね」


「それにしても俺、夢を見てるんじゃないでしょうか?」


「夢なんかじゃないわよ」

「まあでも私たちが下界に降りて来ることなんてまずないからね」

「私がここにいるってことはそれなりに理由があるの・・・」


(最初っから、馴れ馴れしいんだな・・・しかもタメグチだし・・・)


「それにこの場所に降りたのは、昔一度ここに降りたことがあったからね」

「ここであなた・・・コウサカさん・・・タツヤ君と出会ったのも何かの縁だね」


「あのどうして降りてきたのか理由聞いてもいいですか?・・・」


「そうね・・・いろいろあってね、しばらく天界を離れて下界でのんびり

暮らしたくて・・・」

「もう永久に天界にはもどらないかもしれないし・・・」

「だから今日から、しばらくは下界で暮らしていかなきゃいけないの、私」


「それでね、どうしようかなって思ってたら下にタツヤ君がいたから逃しちゃ

いけないと思って慌てて降りてきたの・・・」


「最初っから俺目当て?」


「そ・・・他に誰がいるの・・・それに誰かに白羽に矢を立てないといけない

でしょ」

「それってどういうことか分かるわよね」


「え?・・・・イマイチよく分かんないんですけど・・・」


「に・ぶ・い、タツヤ君」

「どちらにしても、あなた山に登るにしても登らないにしてもいずれは

自分の家に帰るでしょ」


「そうですけど・・・え?・・・まさか俺んちについてこようって魂胆ですか?」


「タツヤ君、今度は飲み込み早い〜・・・でも魂胆っていい方、失礼よ」

「よこしまな考えはもってないからね、私」

「ただ今夜、寝泊りするところが欲しいだけ」


「ね、こんな可愛い子、公園のベンチで寝かせたくないでしょ?」


(可愛い子って自分で言ってるし・・・でも間違ってはないけど)


「私、本名も源氏名も「明日香美比売あすかびひめ」って言うの、

よろしくね、タツヤ君」


「あっ・・・え?源氏名?・・・ああ・・・そうなんだ・・・明日香美?」


明日香美比売あすかびひめ


「そうか・・・じゃ〜・・・明日香ちゃんか・・・」


「明日香ちゃん?」


「そう、たった今から君は明日香ちゃん、そのほうが呼びやすいから」


「まあ、好きに呼んで?」


「でもいいのかな?勝手に連れて帰っても・・・誰かの許可とかいらないのかな?」

「観光協会かなんかに届けておいたほうがいいんじゃないか?」

「それとも本人の許可だけあったらいいか?・・・」


「行くとこないって言ってるんだから俺が天女さんを拾って帰ったって

いいよな・・・」

「それに天女って話題性あるし、俺の知らないような面白い話聞けそうだし」


そんなわけで、俺は富士山を登るのをやめて天女さん「明日香ちゃん」を

連れてマンションに帰ることになったんだ。


とぅ〜び〜こんて乳。




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