第10話ボイラー実地研修の話その3

 それを聞かされた時は、さすがに俺は正直に驚いた。閉館時間も近づいてきたので敏子さんは最後に、

「もうそろそろここの施設も閉館時間だから、昨日までの話は今日はこの辺りまでにしておくね」と言った上で、

「実際にスイッチ式のボイラーの点火と終了を操作したり、ボイラー内で燃えている炎を見たり、水のコックを開けたり閉めたりっていわゆる『ボイラー水のブロー』を体験してみたり、あとは最後の方では『スラッジ』って、配管が詰まったのを実物で見たりして……。そうそうご高齢の講師の先生がぼやいていたのが、今使っているボイラーの教本が実際の現場のボイラーとは、あらゆる面でもう内容が古くてかけ離れていて、テキストと現役の実物が合致していないから、近いうちにテキストも全面的な改訂を依頼しているとか、まあそんな感じで三日間は終わったね」


 講義は嫌いだが、三日目の実地研修には、俺も行ってみたかったなと、またここまで詳しく俺に話をしてくださった敏子さんにお礼を言った辺りで、閉館のチャイムが鳴った。


 二階にある多目的室から玄関へと階段で降りていく途中で、俺は敏子さんに、

「じゃあ敏子さんは今回の実地講習で、無事に修了証が出たのですね」


 一瞬嫌味を言ってしまったかな? そう俺は少し反省したが、敏子さんはそんな俺の心配はお構いなしに、

「修了証? ちゃんと出たよ! 三日間無遅刻無欠席で、なおかつ講義中も居眠りもしていないからね。ただ最初の二日間は前日に八時間は眠れたから良かったけれども、三日目の前日は緊張からか六時間ぐらいしか眠れなかったから、多分三日目も講義だったらちょっと危なかったかなって、今なら思うかな?」


 敏子さんはそうやや砕けたことを言って、俺と敏子さんは玄関でさようならまた来週をして、それぞれの帰路へとついた。


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