第9話ボイラー実地研修の話その2

 敏子さんは講義の体験談を、続けて話してくれて、

「一日目の講師の先生だったのだけれども、講義の最後に『すでに試験を受験されて合格された方は、挙手をしてくださいませんか?』と言っていたね。すると何人かが手を挙げて……。すると講師の先生が『石油や重油なんて、まだ試験に出題されていましたか?』って質問をしていたね。そしてやっぱり出題はあったと、質問を受けた受講生も答えていたね。そこで講師の先生は、まあ三日目に私も知ったのだけれども、今ボイラーの燃料に重油なんて使わないで、灯油かもしくはガスを使うのが、一般的だそうなのね。またまだ試験を受験していない受講生へのメッセージとして『試験直前ギリギリまで問題を解き続けてください。もしも千葉の五井で受験される方は、グリーン車に乗って試験会場まで行って、その電車に乗っている間も、車内で問題を解き続けてください』なんて、メチャクチャ古いことを言っていたわね」


「三日目の実習は、どんな感じだったのですか?」

 俺はそう聞くと敏子さんは、少し渋い顔をして、

「ボイラ協会東京支部の建物の地下に、実際に動くボイラーを使って実習するのね。そこはボイラーの点火は灯油でやっていたわ。だから危険物の乙四がないとダメなんだけれども、それは私は大学在学中に、まだ今ほど試験が難しくなかった頃に資格は取っていたから、そこのところはまあクリアー出来そうね」


 敏子さんが「大学へ行っていた」と言うので、俺は敏子さんに、

「前からお聞きしたかったのですが、敏子さんって今何歳なのでしょうか?」

(墓穴掘ったかな?)と、一瞬後悔したが、敏子さんはあっさりと「三十二歳だね」と、何事もなかったかのように、敏子さんはご自身の歳を教えてくれた。

「それにしても危険物乙四までお持ちだったなんて、全然知りませんでしたよ」

 俺は本当に全然知らなかったのだ。すると敏子さんは「これはまだ私が大学生だった頃の話だけれども」と前置きしたうえで、

「大学生の頃に、ガソリンスタンドでアルバイトをしていたのね。危険物乙四は最近の出題と違って薄い問題集を一冊こなせば、当時は十分合格出来ちゃう程度の難易度の資格だったから、じゃあついでに取っちゃおうと思ったのよ」


 敏子さんは「話を戻すけれども」と言って、

「一応地下のボイラー室の幅の半分を占めたボイラーに、実際に登る機会があるから肩を出した服装と、あとは女性はスカートで来るなって、そういう注意事項があったのだけれども、実際にボイラーに登ったら『ああなるほどね』って思ったね」

(女性までそんな巨大なボイラーに、実際に登った?)

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