第8話ボイラー実地研修の話その1
さて敏子さんがボイラーの実地研修から帰ってきた、次の日の金曜日の部門トレーニングが終わってから、この三日間の実地研修がどんな感じだったのかを、俺は敏子さんに直接感想を聞いてみたくなった。その旨を敏子さんに伝えると、敏子さんはあっさりと承諾してくだっさって「まず場所の話なのだけれども……」と、そこから話ははじまった。
「ボイラ協会の東京支部の建物が、JRの新橋駅からずいぶんとわかりにくい場所にあったなっていうのが、まずは最初の第一印象ね。あれはスマートフォンのマップ案内のアプリがなかったら、はじめて行く人はきっと絶対に辿り着けそうにないね」
敏子さんはまずそこから前置きをしてくれてから、俺が知りたかった実際の感想を、身振り手振りを交えて、話しはじめてくれた。
「三日間の実習の一日目と二日目の二日間は、試験受験のためのテキストとは、別途購入した実地研修専用のテキストに沿って、いくつかの大型液晶テレビに、多分PowerPointのスライドで、一日目と二日目で違うご高齢の講師の先生が、ただテキストを読み上げていただけだったのね。ちなみに自己紹介では講師の先生って、二人とも年齢が七十歳超えだってさ」
そんなご高齢の講師の先生が、実際に講義を展開していたのか……。俺はそれを聞いてビックリしたことを、敏子さんに伝えると敏子さんは続けて、
「だからどうりで実際にボイラーの、実務経験のある人向けに『講師募集中』なんてボイラ協会のホームページで、求人募集をしているわけなのね。また二人ともそれだけご高齢の講師の先生だから、講義はとにかくスライドを読んでいるだけと、あとは時間感覚が二人ともとても下手くそだったわね。特に二日目の最後なんて本当に駆け足で、無理やり講義を終わらせたような、そんな感じだったね。あとは遅刻と講義中の居眠りは厳禁です! いかなる理由でも修了証は発行しません! なんて事前に謳っていたけれども、最前列で普通に寝ている人もいれば、これは三日目の実技の時だけれども、普通に遅刻して来た人とかもいたから。ちゃんと『たとえ交通事情であっても遅刻は絶対に認めません!』って注意事項に書いてあるのにね。まあその人には休み時間に、補講って形で救ったみたいだけれども……」
「でも電車の遅延で遅れるのは不可抗力であって、それは仕方なくありませんか?」
俺がそう聞き返すと敏子さんは、
「たしかにそうね。ただボイラ協会の職員さんは、遅刻がないようにするために、近くのホテルに泊まったりしていたみたいだよ」
(おいおいわざわざホテルに泊まるのかよ。そこまでするのか。ただ遠方から頑張って受講しに来る受講生とかならば、そこまでしてでも絶対に受講するには、致し方のないことなのかな?)
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