第5話今の難関資格の現状って…。

「そうだったのですね。試験問題の冊子まで回収されるなんて、はじめて聞きましたよ。ではそのiPadは、何に使うのですか?」

 俺がそう深く質問を突っ込んで聞いてみた。すると敏子さんは、


「インターネットで平成二十七年から、最新の年度の公表問題までが、解説が三人のそれぞれ違う視点から見て、無料で問題と解答解説を公表している、ホームページがあるのね。そこでこのiPadで、その問題を解いて解答解説を見るために、これが必要なの」


 そんな試験に便利で親切なホームページががあるのかと、俺は驚きを隠せなかったが、敏子さんは続けて、

「ただ今の国家資格ってどれもそうなのだけれども『平成三十年境界』っていうのがあって、平成三十年より前に実施された試験は、例えば問題は過去問の使いまわしだったり、過去問を覚えるぐらいにまで徹底的に勉強をしていれば、合格した試験が、今はテキストからの出題に偏重していたり、もしくは過去問をことごとく外してくる出題とか、あとはその平成三十年を境に、令和に入ってから出題がすごく難しくなっているの。それはどの国家試験もそうなのね。だから難関資格の学習の基本は、まずはテキストをしっかりと熟読してこなすこと。そしてその上でテキストで学んだ知識が、どのように過去問で運用されているのかって、そういった勉強の姿勢を持たなければ、資格の合格が遠のく時代に、なんかいつの間にかなっちゃったんだよね……」


 俺にとってはそんな難関資格にまでなってしまった試験に、自分から進んで受験しようとしている敏子さんのやる気と姿勢に、ただただ感服するばかりであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る