第44話 初めてのお正月
粉雪舞い散る元旦のお昼前…
積もる程ではないが、今日は朝からこんな感じの曇り空が、リビングのカーテンを開けた太郎の視界に広がっていた。
そこへ…
「あらやだ、雪まで降ってるの?」
「あ、冴子さん♪明けましておめでとうございます」
「明けましておめでとうございます♪本年もよろしくお願いします」
そう言いながら客間から顔を出した冴子は、何時もの様なバッチリしたメイクをしてないせいか、何だか幼く見えてしまう。
しかもまだ覚醒していないのか、少し寝ぼけ眼でパジャマのまま太郎の前に正座すると、深々と頭を下げ新年の挨拶をした。
そのリアクションに慌てて自分も正座し頭を下げる太郎(笑)
すると…
「ママもタッくんも何してるん?」
更に寝ぼけ眼で目を擦りながら寝室から現れる華恋。
「新年の挨拶に決まってるでしょ、それよりも華…」
「あ〜〜そうだった!ママ、タッくん明けましておめでとうございますです♪」
それを聞いてちょっぴり覚醒した華恋は、慌てて二人の前に正座すると、こちらも深々と頭を下げ新年の挨拶をした。
(汗)
只…
ね…
「華恋…アンタせめてパンツ位履いてから頭を下げなさい(呆)」
そう…
誰かさんは全裸である(汗)
別に昨夜太郎と大人のプロレスをした訳では無いのだが、彼が彼女の隣で寝ようとした時には既に何も着ていなかったのである。
確か太郎がリビングで寝てしまった華恋を寝室まで連れて行った時にはパジャマを着ていた筈だった。
しかしいつの間に脱いだのか、今はこの状態で眠っている。
それを見た太郎は、ぐっすり眠る華恋を起こさない様にもう一枚彼女に毛布をかけてやると、そのまま一緒に寝たのだった。
まぁ〜流石に冴子も居るのだから、起きたら何か着て現れるだろうとふんでいたみたいだが…
彼のその考えは甘かったらしい(笑)
「あらまぁ〜♡」
「《あらまぁ〜》じゃありません!早く身支度しなさい!!」
「ハイなだし(汗)」
「華恋さ〜ん♪お雑煮のお餅は二個☓2でいい?」
つまりおかわりも有りと言う事である。
「流石タッくん解ってるし〜♡」
バスルームから聞こえるそんな声。
「貴方ってば…華恋と良いコンビだわね(笑)」
「冴子さんは三個+野菜増々ですよね♪」
「…解ってるじゃない…よろしく(汗)」
そんな良い意味で呆れ返る冴子のセリフを聞きながら彼女にそう聞く太郎。
顔を赤らめながら肯定するその姿は流石母娘だと言わざるを得なかった(笑)
とまぁ〜こんな感じで始まる山田太郎宅…
お昼頃には太郎お手製のお雑煮や鯛の塩釜、ローストビーフやおせち料理がリビングに並んでいたのだった。
ちなみにおせち料理の中身の一部(蒲鉾等)は、市販の物を使っているらしいがそれはそれで仕方がない(笑)
それでもだ!
三人前の豪華な食卓である。
「では改まして、皆さん明けましておめでとうございます♪」
「「おめでとうございます♪」」
太郎と冴子は日本酒を、華恋はウーロン茶を手に乾杯した。
「昨年は色々変化に飛んだ一年でしたが、今年もよろしくお願いします♡」
「それよりも食べようよ〜♪お腹減りまくりだし♡」
早速目の前に並んだ料理に攻撃をかける華恋。
その姿は振り袖では無いのが幸いしていた(笑)
「コラ華恋!アンタってばガッツかないの!!」
「聞こえな〜い♡」
「まぁまぁ冴子さん、実家から地元の大吟醸が届いてるんですが呑みます?」
「あら勿論頂くわ♡」
正月早々実母から怒られる新妻はさておき、なんかやたら豪勢な木箱に入っている酒を持ってきた太郎。
何でも蔵出し限定100本の大吟醸らしく、それを聞いた冴子は目をハーマークにしていた。
すると…
「タッくんタッくん、ウチもいつか呑める様になるかな〜?」
華恋は太郎と冴子のそんなやり取りを見て、軽くヤキモチを焼いたのか、横から割り込んできた。
「まぁ〜加減が解る様に、先ずは呑み方を覚えましょうね」
「だったら酎ハイ?あれから始めるし♡」
「いいですね、そうしましょう♪」
「ウン♡」
そんな彼女に軽くクギを刺しつつ優しくそう提言する太郎の姿を見て、冴子は改めてその微笑ましいやり取りに目を細めていた。
『こんなお正月らしいお正月…いつぶりだったかしら…」
冴子はそんな事を心の中で呟いていた。
…そんな彼女は邂逅する…
走馬灯の様に思い出す…
自分と幼い頃亡くなった両親との思い出と…
雫のマスターや涼と薫、秀幸らとの思い出…
そして華恋を妊娠してから今日までの日々…
本当に色々あったのだ。
彼女は彼女なりに…
その後…
食事を終えてひと休憩した三人は、各々和装に着替えると近所の商店街にある古い神社に参拝に出掛けた。
そしてそこでもまた、縁日の屋台に目をキラキラさせた華恋が爆買いするのを只呆れて眺めている夫 《太郎》と義母 《冴子》であった(笑)
…続く…
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