第36話 田中秀幸と言う男…
【田中秀幸】
有名な世界的考古学者 《故・田中和幸》と、フリーの女性カメラマン《故・田中秀美》との間にできた息子であり、鬼無里涼の妻薫の兄でもある。
彼らの両親は、幼い頃大流行した進化系ウイルスによって亡くなってしまった。
だからなのか?
彼は17歳で高校を中退すると、その翌年ドイツに渡り世界でも有名な医療大学を受験すると、トップの成績で合格。
そのままトップの成績を維持したまま卒業した。
しかも学内初の飛び級で二年でだ。
その際彼が発表した論文が、結果当時今だに進化し続けていたウイルスを食い止め、特効薬に繋がるものとなり一躍時の人となったのだった。
しかし…
論文発表後、その総てのデーターと権利をWHOを通じ各研究機関に譲渡すると、何故か大学卒業と同時にその姿を消した。
そして数年後…
彼は《国境なき医師団》のメンバーとして…
ときには《JICA(独立行政法人国際協力機構)青年海外協力隊》のメンバーとして、その姿を確認されると、そのまま現在も世界各国を渡り歩いているのだった。
そんな彼は…
鬼無里涼と冴子の幼馴染であり、華恋の事実上の父親でもあった。
その事を知る者は、当人以外この鬼無里夫妻とBAR雫のマスターの三人しかいない。
華恋もそうだ。
彼女に至っては名前もおろか顔さえも知らないのである。
只…
有名で誇れる人だと知らされているだけだった…
マスターに冴子の棲家と携帯番号を聞いた後、店を出て一時間後…
ここは冴子が暮らすマンションである。
「なんだ冴子〜まだ結婚してないのか?」
いきなり連絡もせずにそこを訪ね悪態をつく秀幸…
冴子はパニックになりながらも直ぐに鬼無里夫妻に連絡すると、程なくして全員その場に集合した。
「アンタ久しぶりにあって開口一番がそれなん(怒)」
「そうよ!アニキったら少しは連絡しなさいよ!!」
「まったく…一発殴らせてもらわないと気が晴れませんね」
そんなセリフを次々に浴びせる三人。
『最後に皆揃ったのは何年前だろう…』
それが解らない位刻が経っていた。
だからなのか、その表情は皆複雑なものだった。
「それに関しては謝る…スマナイ」
「え?」
「マジ?」
「らしくありませんね」
しかし頭を下げる事を知らないのかと思わせる位、何があってもそんなリアクションをしない筈だと認識する三人にとって、その彼の態度に驚きを隠せなかった。
だがそれが結果的にこの場にいる皆の心情を和らげたのだった。
そしてその夜遅くまで酒を酌み交わした四人。
今まで華恋は別の男との間に出きた娘だと聞かされていたが、実は違うと…
秀幸自身は薄々そうじゃないかと思っていたらしのだが、その時初めて華恋が自分の実の娘だという事を知らされた。
そして太郎との
それでも今の関係と距離感を確かめ合い、華恋達の事も含め現状何も変わらない様にする事を確認すると、そのまま別れていったのだった。
まぁ〜しかしなんだかんだと言いつつ、冴子だけは久しぶりに秀幸との蜜月を迎えた後、送り出したみたいらしいが♡
それとこれは余談だが…
太郎と華恋の結婚式の三日前、送り主不明の高価なバーボンが、二人宛てでHANAKOの店に贈られてきたのだった。
…続く…
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