第28話 呆れる程愛してる♡

「タッくん…今…十月だよね…」

そうである…

今は十月の第一土曜日。

「十月だね〜♪」

あの【20✕✕JAPAN・MOTOR・SHOW】から数ヶ月…

あの大量の注文ラッシュも落ち着きを見せ、猫丸産業やブティック《HANAKO》も多少忙しい程度の通常運転に戻りつつあった。

特にHANAKOはオープンから約半年が経ち、従業員やアルバイト従業員達のローテーションや接客対応も問題なくなった事から、華恋や凛夜達四人は、今月から月1交代で土日連休が取れる様になった。

そしてジャンケン勝負の結果、一番手で華恋が休みを取る事ができたらしい。


「じゃ……何でこんなに暑いのさ!!」

【本日の気温・只今30度】

タンクトップ姿で吠える華恋と、太ってる割に暑がらないTシャツ姿の太郎…

天気予報曰く、季節外れの夏日だそうだ(汗)

そんな中、太郎と華恋はこの休みに合わせて本格的な引っ越しをする事にした。


…したんだけどね……


その前に…

「それはね、朝っぱらから華恋さんがハッスルしたのと、引っ越しで身体を動かしてるから」

「フン!二回目以降はタッくんの方がケダモノだったし、そのお陰で足腰たたなくなったし、気絶してたし、業者さん待たせたし、結果的にタッくんが悪いもんね」

だそうだ(笑)


おおかた二人共二日間休みが重なったので、リミッターが緩んだらしい。

特に華恋が(汗)


しかし彼女の膨れっ面と抗議の声を聞く限り、おそらく完膚なきまで敗北したのだろう。

特に華恋が(笑)


しかも二回目以降と言う事は…欲望のまま頑張ったんだね。

特に太郎が(笑)


「…反省してます…」

華恋の前で正座をして許しを請う太郎…

完全に確信犯の様だ。

「本当に?」

「お昼はサラダ素麺と五目炒飯を用意してますのでそれで」

「…じゃ〜許すし♡」

チョロい…

でも腰を擦っている所をみると、華恋が気を失う位堕ちたなのは事実なのだろう。


ここまでの会話の流れで既にバカップルさが露見している二人(笑)

結果的に華恋が住んでいたアパートからの家具や荷物の搬入設置と、今は二人で住んでいる部屋からの荷物の搬入設置を依頼していた業者を待たせたらしい(汗)


そしてお昼の時間…

午前の部の搬入が終わった二人は、何も片付いていない新居のリビングで食事を取っていた。

ちなみに午後からは華恋が住んでいたアパートからの搬入設置である。

「でもタッくん、本当にあのロフト付きの部屋…自分用にしても良いの?」

「この間も話したけど、華恋さんの仕事柄それがベストでしょ♪」

「まぁ〜確かにそうだし…」

「ほら、時々作品の陰干しとかもしなきゃいけないでしょうし、サンルームと繋がってたら利便性が良いでしょ?」

「ウン…」

食事をしながらそんな会話を交す二人…

実は事前の話し合いで七畳の部屋は、華恋のプライベートルームに決めたのだった。

実際、前に住んでいたアパートもそうだが、仕事絡みの物品が多い彼女にはそれがベストの選択だと思う。

しかし結果的に一番良い部屋を自分の部屋にしてもらうのに気が引けている様だ。


するとそれを察した太郎が…

「その代わりと言ったら変ですけど、屋根裏部屋を貰いましたからそれでチャラですよ♪」

「あ〜あのプラモデル?の山(笑)最初タッくんの実家から送られてきた時はビックリしたし!」

そうなのだ。

華恋が指差したその先には、山の様に積まれた属に言う【積みプラ】がそびえ立っていたのだった。

「一言【アンタ、いい加減引き取らね!】のメモ付きでしたね(笑)面目ない…」

どうやら実家から強制的に送りつけられたものらしい(笑)

実家で暮らしていた頃の太郎の隠れた趣味というか、殆どネットやオークションで購入したものばかりだ。

太郎曰く、御小遣いや御年玉、バイト代等で中学から高校までの六年間で収集したそうだ。

「アハハ♪じゃ〜あそこ秘密基地的な場所にする?ヲタクなタッくん的にはありじゃん♡」

「べ、別にヲタクというわけじゃ…」

華恋のそんな提案と的確な指摘に反論する太郎。

しかし…

「……アレ」

麦茶を飲みながら再び積み(罪)プラの山を指差す華恋。

「ハイ…返すがえすも面目ない(汗)」

太郎の完敗である…(笑)


その後…

「そっちはどう?」

「ベッドや家具関係の配置は終わったし〜♪」

「こっちもリビングは済んだから見てくれるかな?」

どうやら午後からの搬入設置も無事終わったらしい。

「お〜なんか良き感じじゃん♡」

それはまだ荷解きがされていない段ボールの山があるものの、ちゃんと《らしく》配置されていた。

冷蔵庫等家電関係は、華恋が一人暮らしをする際に購入されたものが新品ばかりなのでそのまま使う事にした。

また太郎の部屋にあった家電関係は、殆どが十年以上使っているものばかりな上、中古品も多いのでこの際買い替える事にした。

ちなみに明日二人で雑貨共々買いに行く予定である。


華恋の作業部屋も必要な家具やミシン、キャンパスやデッサン用のデスク等、仕事道具も無事配置出来た様だ。

他の部屋も然りである。

特にベットだけは、何故かいつでも使える様にセッティングされている(笑)

御丁寧にイエス・ノー枕も二つとも《イエス》を表にしてセット完了だ(汗)


「配置さえ終われば後は荷物を順次入れていくだけだね」

取り敢えず今見た光景を見て見ぬふりしながらそう華恋に話しかける太郎…

「ウンウン♡これなら今月中に引っ越しはendするし♪」

「そうだね、明日入り用なもの買い揃えて配達してもらえればいいし」

「所でタッくん、かなりお金使ってるけどさ…大丈夫なん?」

一通り配置を確認した二人は、ひと休憩入れようとリビングに戻り喉を潤した。

すると華恋は不意にそんな質問を太郎に投げ掛けた。

ここまで引っ越し費用も含め、明日の買い物も結構使う事も予想がついていた。

その総てを太郎が出しているし、出すと言っている。

それは華恋でなくても心配にはなるだろう…


その質問に対して太郎は…

「あ、その事なんだけど…これ渡しておくから」

「え、通帳って…何これ!0がすっごく並んでるじゃん!!」

彼女に渡した通帳で答えた。

「猫丸産業で働いて十四年間でもらったボーナスや臨時賞与を入れてた通帳♪引っ越し代やらなんやらで結構減ったけどキリのいい数字に合わせたあるから」

「減ってもこれだけ残ってるん…?」

それは華恋が知る数字としては天文学的な数字だった。

確かに母親である冴子はこれ以上の数字を毎月動かしているが、実際数字として見た事が無かった。

そんな数字に近い記載が今目の前に並んでいるのだ。

「だってこの歳まで独身だったから、給与だけで暮らせてたし…」

すると、段々語尾が小さくなりながら太郎はそう答えていた。

まぁ〜そうなのだろう…

女遊びは勿論だが、ギャンブルも煙草も嗜まないし酒も溺れるほど呑みはしないし呑みにも行かない。

ましてや車等につぎ込む訳でも無い。

模活も大学に進学してから以降は、手をつけていないし、ましてや勤め始めてからは仕事に集中するあまり他の事には目もくれていなかった。

その結果がその数字なのである。

そして気が付けば女の影も見えないまま、メタボで髪も薄くなってきた…

ハタから見れば寂しい男だと思われたかもと、自分で言ってて落ち込んできたみたいだ。


「あ〜ヨシヨシ、自分で言ってて落ち込むなし〜♪それでこれをうちに?ナンで?」

「それね提案なんだけど…結婚して最初の一年はお互いの給与から無理をしない程度にここに生活費を入れていかない?それでどの位毎月家計で使うかプラマイの様子を見ていくのはどうかな」

そんな事を考えていた太郎…

それが華恋の疑問に対する答えらしい。

おそらく自分なりに色々と考えた上での事だろう。

「流石タッくん考えてるじゃん♡確かにお互い初めて尽くしだし、何でも試してみないと解んないもんね〜♪♪」

その提案に躊躇なく賛成する華恋。


だけど華恋さん華恋さん…

「ちょいまち華恋さん…この話しの流れで何故に服を脱ぐ必要があるのかな?」

「暑いから〜♡」

「まぁ〜確かに暑いけど…」

「休憩はね〜♡」

「それは確かに必要だよ…」

「ベッドも〜♡」

「あ!何か察しがついた…」

「リベ〜ンジ♡」

「拒否権発動したいけど…」

「却下だし〜♡」

という事でこの流れでまだ陽が高いうちから寝室に引っ張られて行く太郎(笑)

しかし…

大方の予想通りリベンジに失敗し、撃沈する華恋だったりする(汗)



…続く…











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