第9話


警察例外4課。

ここは超常的に事件を主に扱うの宝庫とも言える場所である。

特に4課は由緒ある家からの参入が多く、良くも悪くも癖が強い人達が集まっている


「それで?今回の例の協力者は大丈夫なんですか?土御門先輩。」

「明道と言え。苗字は嫌いなんだよ。」

「先輩だって渡辺って私の事呼ぶじゃないですか〜。」


黒髪リボンポニテの聞いている例の協力者とは無常仮寝の事だ。

判明しているだけでも100以上の魔法を持っているであろう人間を協力者にするとはとても有益だ。だが、相手はそもそも子供であり、魔法を手に入れた手段も判明してない以上、危険性の方が高い。


「って言うか先輩。そもそも協力者って時間をかけて作る者ですよね?…なんか急いでいるんですか?」

「…仕事上必要だと感じたからだ。」

「あ!誤魔化しましたねぇ!?」


別にどうって事のない理由だ。

そう、別にありふれた理由である。



____________________


「おばちゃん、このお菓子ちょうだい。」

「はいよ。」

少し休憩することにした。

調べようにも恐らくこれ以上情報が出てくる事はない。せめて御神体の形くらいは分かりたかったが…。


「ねぇおばちゃん。隣村の今劇神社って知ってる?」

「ああ、能やら歌舞伎やらをやっている神社だね?知っているよ。よくお酒を振舞っているのを飲みにいくねぇ」

え、そうなの?なんで図書館の情報がこんなにも少ねぇんだよ。

おばちゃん曰く、演劇関連の神様を祀っている為に、定期的に能や歌舞伎を披露しているらしい。


「その神社の御神体とか何か知ってる?」

「御神体?さぁそんなの見た事がないよ。」


んーやっぱり御神体だけわかんねぇー。せめて大きさくらいでもわかんねぇかなぁ…

…やっぱりこの依頼危なさそうだし色々と準備してから行こうか。

「おばちゃん、ホームセンターの場所わかる?」


現実世界ではフィリピン爆竹で山は吹き飛ばない。

だけれど魔法は違う。

クソみたいな魔法でも使い方を上手く間違えたら強力な武器となるのだ。


手のひらサイズの小さい壷を20個、石灰で出来たチョーク、ワイヤーとペグを16本ずつ買って今日泊まるチェーン店のホテルへ向かった。


チェックインをしてからすぐに『地脈に一時的に繋がる魔法』(地脈を感じ取らないと発動がそもそも無理なので『地脈を感じ取る魔法』が必要というクソ魔法)を発動してすぐに工房で活動する。

壺には『ランダムで低級霊を召喚する魔法』を付与。ワイヤー、ペグにも魔法を重式『付与』していく。


「あ、ペグは研いどかないと。『魔法の範囲を制限する魔法』『魔法の持続時間を余っているリソース分だけ向上させる魔法』『体全体にに30秒間ヤスリを纏わせる魔法』。」


体全体から右手の人差し指だけに設定する。


対人戦はもちろんだけど、御神体が周りに悪影響を与えている場合、破壊か封印、回収をしないといけなくなる。封印は手持ちの魔法では無理だとして、破壊するとしたら魔法が付与されている物を破壊するのはレベルにもよるがそこそこの火力が必要なのは間違いない。

…やっぱり、フィリピン爆竹10個くらい買ってくるべきだったかな…?


作業を終わらせてそのまま寝ることにした。


そして、翌朝。


「次はー今劇村ぁー今劇村ぁ〜。降りる方はボタンを押してくださーい。」


あの後、駄菓子のおばちゃんから神社に近いのはバスなんだと聞いたので、電車ではなくてバスに切り替えた。


お金を払い、バスを降りる。

バスは一日に1本。次に来るのは明日のこの時間だと言う。

ちなみに電車は今から一時間後に来るらしい。


「それで?御神体の回収ですが、民間人の僕がやって犯罪にならないんですか?」

『はい。あなたの例の事件も同様に、依頼に関する大抵の犯罪は揉み消されます。もちろん、事が大きくなったり意味のない殺人は揉み消すことが出来ません。とりあえず、国益になればなんの問題もありません。あぁそうそう。君が揉み消す場合も我々は関与しませんし、遺体が出来た場合はそちらの方でお願いします。』


それが、異能力外部協力者を続けるコツです。そう言って土御門は電話を切った。


「…分かった。好きにやる。」


僕の首を握っているのは土御門だが、依頼を遂行するのは僕だ。馬が合わなければ向こうから協力者を切られるだろう。


神社へと足を進める。

生まれて初めて生で見る手入れされていない自然な森に心を動かされながら深呼吸で新鮮な空気を肺に入れていく。


大して変わる事のない景色を一歩ずつ動かしていくと沢山の石の階段が見えてきた。


「…これ、登るの?」


いや、一応毎日軽いランニングと筋トレはしてるけどさぁ。この角度もそうだけど何段あるんだよ…


魔法は使わない。やっぱりこう、魔法を使わずに登るのがなんか良いと思うんだよね。

そんなよく分からない考えを持ちながら頂上を目指していく無常だった。



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「ん〜登ったー。」

およそ約5000段くらいだろうか?

登った時に見えた神社はとても綺麗だった。

…まさかこの山そのものが御神体だったりして…あれ?案外ありえる話だな。つか何で御神体の回収なんだろう?

依頼に出すとしたら40年前の行方不明者関連だったりしないのだろうか?

いや、それじゃあ土御門の言ってた国益って言うのは一体…?


「参拝者ですか?」

声をかけられた方を見ると巫女さん姿の女性がいた。


「はい、えっと…あなたは?」

「あ、はい!この神社の巫女をやっている高橋翠泉と言います。」

「スイセン?」

「はい、カワセミに水のイズミと書いて翠泉です。」


20歳くらいだろうか?メイクなどはしていないが綺麗な…んん!?

(『自分を落ち着かせる魔法』!)

すぐさま、MPを35も使うカス魔法を使う。


魅了の類だろうか?魔力が発される気配…いや、なんか変だなこれ。何処か遠くで発動したかのような…?


「ありがとうございます。この神社っていつからあるんですか?」

「えっと、この神社はですね…」


何事も無かったかのように高橋さんは話を始めた。

さっきのは一体、何だったんだろうか…?


「…と、言うわけです。」

「詳しいんですね。いつからここに?」


そう言うと彼女の表情が一瞬、歪んだ。

思わず身構えてしまったが彼女は先程の愛嬌のいい顔に戻って話を続けた。


「そんな事より御神籤は引きませんか?」

「…案内してもらってもいいですか?」



いつでも戦闘が出来るように身構えとかないとな。









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