私の帰り道


 私の帰り道


電燈がジーっと呟く中を

ぼちぼち帰るよ。夏の黄昏を

その口いっぱいに頬張って

老いちゃう前に味わっておく。

色々な軽い気持ちを乗せた私のチャリンコは

世界の浮力に身を任せて、

明日へ流れてゆく。

温暖化の前だって

アラスカにも時々雨は降ってた。

カサついた唇から鉄の味がして

まだ生きているって噛みしめる。


遊園地で落としたポップコーンは

スズメの争いの種で、

いつも通り、夕日を見送るこの普通は

人間の争いの種。


街のアスファルトが盛り上がっているのは

昔、どこかで誰かが傷ついた証拠

何食わぬ顔して通り過ぎてく私

ペダルを踏んでいるこの足が

明日もついてるなんて保証はないのに

社会が感じる世界のスピードは

昔よりもきっと早くなったはず

人類が年老いた証拠だね。

止まらない私の考えも

チャリのカゴにぶちまけて 

ペンギンの泣く北へ

すっ飛ばす。


日常というのはいつだって

まつりのあとのような静寂に包まれている。

そのことに気付いた私の心は

ちょっとしたクシャミをした。

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