からくれないの魔女
散花
からくれないの魔女
彼女との契約は危険をともなった。
けれど対価のソレは人々が欲しいもの、全てに値した。
在る者は高貴な物を。
在る者は真実を。
在る者は確信を。
そして在る者は運命を手にできた。
彼女は禁色だった。
気高き者だけが彼女と出会えた。
彼女は笑う。
「運命の糸。運命の果実。真実の色。情熱の色。勝機の色。すべてなる生き物の血肉となる色。色。色。……素敵よね。すべて同じ色なのよ。」
悦に入る口角は美しく半月の様に広がる。
「けれどね、同時に停止の色。戦の色。否定の色。禁止の色。……危険な色でもあるのよ。判ってるのかしら?」
高台からこちらを見下ろす彼女は、深紅のドレスを身に纏い、仰向けに寝転び、世界を逆さまにしたまま愚痴をこぼした。
彼女の手の届く所にはサクランボが成っていた。彼女は体勢を変えずそれをひとつ摘まみ、実を唇にあてた。まるでサクランボの実の艶やかさと自らの唇の潤やかさを比べるように。
それに飽きると実を、いや実に映る世界を眺めるように見つめていた。
「簡単に手に入らないから、それが気高くなるのに。それが真実なのに。それが確実なのに。それが、貴女の運命なのに。」
彼女は悲しげにほくそ笑んで世界を一口に飲み込んだ。
からくれないの魔女 散花 @sanka_sweera
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