狩人のため息

 狩人の給料は安い。

 たぶん、オレだけかもしれないが、貰える額はいつも通り。


「はぁ、ふぅ、はい、七千円」

「……ありがとうございます」


 茶封筒に入った七千円を貰い、オレは頭を下げる。

 これがオレの手取りだ。


「あの子は、養護施設に送ったからぁ。ふぅぅぅ……」

「なら、良かった」

「それにしても、直木君。君は、物好きだね」

「どういう意味です?」

「今回の件は、ケモノの仕業とはいえ、警察に任せてもよかったんだ」


 茶封筒をポケットにしまい、オレは言った。


「それじゃ、何も解決になりませんよ」

「ほぉ。……げっふ、こっほ」


 酒の飲み過ぎで、内臓が弱っているのだろう。

 狸乃は目を剥いて咳き込み、ティッシュで口を押えた。


「自分の子供じゃなくても。子供の事は、大人が見てやんないと。あいつら、それこそ路頭に迷っちまう。それは、あんまりでしょう」


 まだ若いからこそ、先に産まれたやつがしっかりしないと。

 何も教えてやれない。

 オレは、老若男女問わず、不幸になってほしいわけじゃない。


 みんなが人並みに生きれたら、争わずに済む。

 ただ、普通を望んでいるだけなんだ。


「あー、そうそう。女王様の件ね」


 狸乃が死にかけの虫みたいに呼吸をして、口だけを動かす。


「明日、来るからね。たぶん、荒れるよ」

「そうですか」

「……嫌になるねぇ。げっほ、こほ」


 どんな奴かは知らないが、オレのやる事は変わらない。

 人外と人間の仲介。

 非行する輩を止める事。


 あんまり、一昔前の大人がやっている事と何も変わりはしなかった。

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ザコがゆく 烏目 ヒツキ @hitsuki333

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