第41話 金間の屈辱&新たなライバル

(金間周三視点)


 おかしい。沖縄報道には遠野悠馬からの噂は流したはずだ。だが何故だ?全くメディアからそれらしき噂が無い。上手く記事にできたら、報酬の金をやるといったのに。遠野一族という危険な目は早く潰しておきたいのに。


 沖縄のニュースになっているのは留置場で1人男が暴れ出し、脱走したというニュースばかり。今も行方が分からないせいで余計大きなニュースになっている。恐らく奴だ。俺が尻尾を来た会社にいた逮捕された3人組。あの3人組の中の誰かだろうな。余計なことを。やけになって俺のやってきたことをバラしそうで目障りだ。


 まあ、それでも大丈夫だ。遠野一族やあの3人組が告発やら何かしても俺には莫大な金がある。これさえあれば俺は無敵。これまでもそうだった。俺に歯向かうようとする奴は金で示談を持ち込み黙らせた。それでもまだ歯向かう奴は金で手を回して社会的に死なせる。これが俺のやり方だ。俺の敵になる奴は皆んなこうなるんだ。


「社長」


「おう、どうしたんだ?」


「4月の会社の売り上げ業績です」


 秘書から渡された売り上げ業績を見る。


「これは…どうなっている!、何だこの下りようは!先月は少し下がった程度だったのに!」


「恐らく、私達のライバル企業であるスペース社が大幅に売り上げを伸ばしているのが原因かと思われます。彼らは近年、情報通信業と工業会社が合併したことで急成長していて高品質の商品を数多く作っていますからね」


「それでニーズがあっちの方にいったということか?」


「恐らくは…それに…」


「何だ?」


「いえ、何でもありません。それでは、私は別の仕事がありますので失礼します」


 秘書が部屋から出ていく。


「バン!」


 俺はイライラから思わず、机を殴っていた。ここまで会社の業績が下がるのは初めてだったからだ。


「それもこれも全部社員の奴らのせいだ。奴らがちゃんと働かないからだ。もっと良い商品を作らせて業績を上げないとな」


 俺はずっと勝ち組の人生を歩むんだ。ここで転落するわけにはいかない。


(遠野視点)


 朝6時。俺は家のベランダから海を眺めていた。


「今日は良い天気になりそうだな」


 俺達は今日、インターハイの県大会に臨む。場所は徳崎テニスコート。1週間前に練習試合をしたコートと同じ場所だ。昨日準備はある程度しておいたからもう出る準備はできていた。


「それじゃあ、行ってくる」


「いってらっしゃい、悠馬。頑張ってね。今日は外せない用事があるから行けないけど、応援してるわよ」


「ありがとう。行ってきます」


 俺は一足早く会場へ向かった。流れる風が涼しくて気持ちよかった。強風というわけでもない。そよ風程度の風だった。風が強いとやりにくくなるので今日は風もいいぐらいでやれそうで良かった。しばらく歩いて俺は会場に到着した。


 時刻は6時30分。場所取りは山田が既に行なったと連絡が来たので、俺は10分間壁打ちをしようと考えた。壁打ち場には俺と同じくこれから壁打ちをする人がいた。


(かっこいいな)


 凄くかっこいい人というのがその人の第一印象だった。背も高くてスラットした体型で顔も物凄くかっこよくて正にイケメンというべき人だった。


 そのかっこいいオーラに圧倒されながらも俺は壁打ちを初めることにした。壁打ちをしばらく続け、今日の自分の調子を確かめていた。


(うん。悪くない)


 今日の俺の調子は悪くない。絶不調じゃなくて良かった。そう思ったとき…


「コン」


(あ、しまった…)


 運悪く壁の尖った部分に当たってしまいボールが横にそれてしまった。横にいたあのかっこいい人も打っていて、そこにボールがいってしまったので凄く申し訳なく感じる。


「バスン!」


 彼は鋭いボールを打っていた。彼はどうやら左利き。フォームも綺麗だったし、スピンもしっかりかかっている。この人もかなりの実力者のようだ。彼は流れ込んだボールに気づき、ボールを拾って返してくれた。


「ありがとうございます」


 俺はお礼を言って再び壁打ちを始めた。


(あの人と試合してみたいな…、意外と今日できたりして…)


 俺は新たな実力者と出会って大会の日がスタートした。







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