第27話 夏休み子供祭り
「私のどこがいいの?」
「絶対に届かないところです」
楓が告白されている現場に立ち会わせた。絶対に届かない相手に恋愛するのはただの誤解か、甘えだ。自分が女の子に恋した実績を作るか、恋をしたという自己満足に浸るか。
「だったら、キス出来る? 舌はいれないよ。でも女の子にキスをする意味は知っているよね。まさかそれを考えずに私の前に来たの?」
あの子今、めちゃくちゃフェロモン出しているんだろうな。こっちまでドキドキする。早く終わってくれ、そこをどいてもらえないとあの用具室に行けない。こちとら五回続けて使用中だぞ。蛍光灯がピンチなんだ。
「その楓様なら」
「悪い子だ」
何をしてるか、見ない。
うわぁ、でも見たい。モテ女がする女の振り方を勉強したい。今すぐにでもその力を使って、上手く交わしてこの仕事からさっさと足を洗いたい。
「何してるの?」
「何してるのじゃないわよ。今、勉強中なんだから静かにしてよ」
もう、終わってしまうでは無いか。何をしてるのって言われたのか。サーっと血の気が引いた。奏が後ろにいる。
「楓、また告白されてるの」
「見てたの?」
「失礼します」
「逃したわね」
「困ってたんだ。前の試合で一目惚れで、友達経由で連絡先を聞いて来て、一度お話を聞いてくださいって言われたから」
「こっちに流してくれれば良かったのに。アンタのファンクラブいつでも作ってあげるわよ」
「よく言うよ。ファンクラブと言いつつ、全部自分の女にするくせに。そういうこすいことするから、手に入れたい物を私から奪えないんだよ」
「アンタも絶賛不振中じゃない。学園一の王子様はどこに消えたの?」
「言うね。大体、授業中でしょ今」
「あなたもそうじゃない」
「こっちは自習だよ」
「奇遇ね。自習になったのは私が食ったからそうなったのよ」
「あれれ、じっくり開発がお好みだったのでは?」
「向こうが授業中にいいようにされたいって言うからしてあげたまでよ」
二人が言い合っている間に引き返した。蛍光灯はまた今度にしよう。
職員室に戻るとビラが置いてあった。職員室にいた先生が「今度うちのグラウンド使って子供祭りをするんですよ。掛川さんは初めてでしたよね」と。
「はい、こういう祭りに参加するのは久しぶりです」
「学生達が子供向け番組のテーマソングをかけて一緒に踊ることもあるんです。未来の生徒獲得へ、はちょっと虫が良すぎるですかね」
私は愛想笑いをしたが、先生もさほど本気にしていないようだった。
「とりあえず用務員さんなので、警備をお願いします。他の先生はあとで紹介します。計画表はその先生とで決めてください。おそらく校舎内の警備になると思います」
それが一番まずいの。祭りに乗じて、イチャイチャする生徒は絶対に校舎内に出るんだから、絶対にいるよ。あの奏という女とか。
「意外?」
ちゃんとダンスをしていた。
「いえ、真面目だなっと思って」
「こんな時に校舎で食うなんて子供に言える?」
楓はちゃんとミニバスケしていた。
「見に来てくれたの? 一回やっていく?」
「掛川さん、校舎。校舎お願いします」
「すみません。私が不届き者でした」
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