Chapter.Ⅲ 暗黒≒光明
Karte.12 Discord
クラスで何やら騒いでいる声がする。
「おい!今日転校生が来るらしいぜ。」
「聞いた聞いた!なんかどこかのお嬢様らしいな。」
「なんでそんな子がうちの学校に?」
「なんか家庭の事情とか??」
「可愛いのかなあ?」
転校生が来ることで話題は持ち切りだった。
「はぁ…どうして男子はみんなそうなのかしら?」
「まぁ、女子も期待していない訳ではないけど…男子は女子生徒とわかっただけですぐこれ。」
「本当よね。しかもお嬢様っていうのに反応なんかしちゃって…」
女子は転校生よりも男子の反応に呆れている様子だ。
「景も明快も興味は無いの?」
全く会話に参加しない二人に零花は問う。
「僕は…別に…」
「景は仕方ないか…あんまり人を好きになるって感覚わからないんだっけ?可愛い子が来るみたいな噂になっても興味ないよね。」
少なからず、景には離人症性障害の影響があるのかもしれない。
興味がないという言葉は嘘になるが、興味が湧かない或いは、実感がないというのが正しい。
「明快は?」
「俺も別に…ヤンキーとお嬢様なんて漫画でも稀な展開だぜ。」
明快も意外と現実的なことを考えている。
教室の扉が開き、先生の後ろを転校生が少し下を向きながら入ってきた。
「はい!みんな静かに!」
容姿に見とれたのか本当にみんな静かになった。
「今日からこのクラスで一緒に勉強することになった転校生を紹介する。みんな仲良くするように。挨拶、出来るかな?」
「はい、
黒髪の長髪でキリッとした目をしていて、見るからに美人でお嬢様という言葉が相応しいくらいの顔立ち、緊張からか肩に力が入っているように見えるが、立ち姿はまるで礼儀や作法を知り得ているような、エレガントな姿勢にすら見えた。
「お、おい…めちゃくちゃ美人だよ!」
「やばくね?」
「本当にお嬢様が来たよ。」
男子生徒たちは小声で話しているつもりだが、クラスのみんなには十分に聞こえている。
「じゃあ、窓側の一番後ろの席に座ってくれ。」
「はい。」
窓側は景のすぐ後ろで、隣は零花だった。
「本当に男子生徒の目と言ったら…」
休み時間はみんながその子の前に輪を作るようにあ集まって根掘り葉掘り聞いていた。
「ねぇ!親ってなにしてる人なの?」
「え、建築士…だけど」
「まじ!?もしかして最近建ったでっけぇ家って越智さんの家?」
「う、うん。」
「すげぇ、もしかしてお手伝いさんとか執事とかいるの?」
「いや…そういうのは…」
「やめなよ!越智さん困ってるじゃない!」
零花は顔色や些細なことにも敏感で気付きやすい体質なので困っている顔を見ると黙ってはいられないのだ。
「可愛くねぇ女!ちょっと聞いてるだけじゃねぇか」
「ほんとほんと!」
文句を言いながら、つまらなそうにして男子生徒たちは捌けていった。
「ごめんね、ウチのクラスの男子あんなのばっかりで」
「あ、うん大丈夫。」
「越知さんて緊張してるのか落ち着いてるのかわからないよね。私は丸河零花よろしく。」
「よろしく。」
性格は掴めないが、零花は直感的にこの子とは仲良くできそうな気がすると思っていた。
零花のそういう直感はなんとなく当たる。
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