エピローグ

 彼が命を絶ってからその後、その世界の人々は何事もなくいつも通りの生活を送った。


 元々誰からも認知されていなかった彼は世界にとっていてもいなくても同じだったのだ。しかし、ある時彼が殺した男達の体から時間魔法の魔力を感じた者がいて、彼を探したが見つからなかったらしい。


だが、男達が時の魔術師狩りをしていたということもあって、自業自得という人の方が多かったそうだ。あの時彼らを襲ったのも、ただ街から外れたところで野宿していたから標的になっただけなようだ。


だから、男達が彼らの正体を知っていたわけでも、狙っていた訳でもないようだ。ただ無差別に何人も襲っており、そのうちの一人になっただけなようだ。


 彼は彼女と死後の世界から見て笑っていた。そして、その事実を知り彼は少しだけ怒りが増した。


「ごめんな。俺のせいで」


「そんな、謝らなくて良いよ」


「……そうか」


 彼はそう言って優しい笑みを浮かべる。しかし、その笑みには少しだけ苦しさと後悔が見えた。やはり、どれだけ幸せな気持ちになろうとも、あの時の苦しみと後悔は無くならないらしい。


彼女はそんな彼を見て心配した。しかし、すぐに微笑んで彼の近くに座る。


「……あの時、俺は世界に絶望し死を選んだ。新しい世界でも絶望して死を選んだ。だが、今回の死は前とは違った。お前がいたからだ。ありがとう。そしてごめん。レミア」


「私も、あの時……殺してって頼んだ時のこと、ずっと謝りたかった。本当は生きて旅するのが良かったはずなのに、世界に絶望して死を選んだ。しかも、最愛の人に苦しい思いをさせて。でも、こうして今会えたから嬉しった。死んで欲しかったってわけじゃないけど、もう一度こうして会えて良かったよ。ありがとう。慧人」


 そして2人は優しくキスをした。たとえどれだけ苦しみ後悔しても、それでも彼らは死後の世界で、永遠の幸せを掴んだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

時の魔術師の冒険録 五三竜 @Komiryu5353

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ