最終話 贖罪の終わり

 慧人は男達を殺してその体をバラバラに解体した。そして、1人は街に捨て、1人は森に捨て魔物の餌にして、1人はギルドに捨ててきた。当然その死体を見た人は叫び声を上げ騒ぎになる。


 しかし、慧人には時間魔法がある。時間魔法を使って誰にも見られることなく目的地へと向かった。


 後で知ったことなのだが、慧人が殺した男達はこの世界でかなり有名な貴族の息子達だったらしい。素行が悪いで有名で手がつけられなかったのだと。


 その後その親による犯人探しが始まったが、犯人が全く出て来ないせいで迷宮入りしてしまった。


 慧人はそんな噂を聴きながら世界をもう一度旅した。本当はレミアと共に向かうはずだった街や場所、世界の全てを旅し尽くした。それはまるで贖罪の旅だった。


 そして、役1年で世界一周を果たす。慧人はその旅で世界の全てを知り尽くした。


 それに、1年も経過すると犯人を探していた警察的な立場の人ももう諦めてしまっている。今では親だけがほざいているようだ。


 慧人はそんな絶望と苦しみに満ちた贖罪の旅を終えレミアの墓のある場所へと戻ってきた。この場所も、1年が経過したことにより森が深くなりさらに見つかりにくくなっている。


「……こんなところで2人で暮らしたかったな」


 慧人はそう言う。


「あの時お前を守れなかったのは俺の責任だ。罪を償うなんてのは無理な話だ。だが、お前をあんな目に合わせた奴らは1年前にきちんと殺した。仇は打ったよ。あとは、最後の贖罪を果たすときだ」


 そう言ってレミアを殺したナイフを取り出す。このナイフは慧人がずっと大切に保管していたものだ。


「俺はこれまで自分の時間という代償を払ってお前と行きたかった街を回った。お前にその話をするためにな。そして、今度は命を代償にお前に会いに行く。これで俺の贖罪の旅は終わる。待ってろ」


 慧人はそう言ってナイフを自分の胸に突き立てた。そして、幸せに満ちた笑みを浮かべるとゆっくりとその刃を心臓に突き刺していく。


 慧人はそのまま自分の命の灯火が消えていくのを感じとった。そして、フラフラとする足取りでレミアの墓に近づき振り返ると墓に寄りかかる。


 そして、その幸せに満ちた笑みを浮かべたまま慧人は自ら命を絶った。そんな慧人にはまるで祝福するかのように太陽の光が差し込み、鳥や周りの木々が歌っていた。


「ありがとう……」


 死ぬ前にはなったその一言は、ゆっくりとその場に広がり空へと上がって行った。

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