第18話 外出許可

おかげさまで、私はこの部屋から一歩も出ていない。


困った……こんな呪いが解けるまでの間、こんなところで缶詰なんてごめんなんだ。


ロベリアの家の場所教えるだけなら、クロウに伝えれば探してくれるだろうけど……そこはさすがの魔女ロベリア、結界を張っているので、普通に散策しただけでは家まで辿り着けない。


少しコツがいるのだけれど、それを伝えるよりは私が行っちゃったほうが早いのよね……


だからなんとかして、ここから出ないと……



「あの……ねえリイナ?」



「何?」



こんな無垢な笑顔をベッドの傍から向けられて、


そんなことを今のリイナにいうわけにはいかないのよね……自分のせいだと思ってるからこうしてるわけで……強く拒否したらまた泣き出しかねないし。


どうやって切り出そう……とにかく寝てる場合じゃない、外に出ないと……。


なんと言い出そうか口をもごもごさせていると。



「何かやってほしいことでもあるの?欲しいものでもいいよ!」



なんてリイナが言ってくれる。



「本当に?」



私がそうきくと、リイナが強く頷く。

なのでダメ元で頼んでみることにした。



「じゃあ、外に」



「だめ!」



結果一瞬で棄却であった。



「また誰かに狙われたらどうするの!?」



「狙われるとしたら、リイナあなただと思うわよ?狙われてたのあなただし。」



本来のターゲットではない私が狙われる確率はだいぶ少ないのだ。

口封じのため……の可能性はあっても、いろんな人に顔はすでに見られてるから意味ないし、何もしなければ死ぬし、とどめを指す理由もない。


リイナもそのことは一応わかってるみたいだけど……それでも首を強く横に振る。



「でも心配だよ……外に行って何したいの?」



今のリイナに、あの子供を探しに行く……なんて言ったら怒りそう……。

正直に話すのだけが正義ではないわ。


仕方ない、もっともらしい言い訳でここから出してもらえないか交渉しよう。



「息抜きで、神殿の庭園を散歩するだけ……でもダメ?」



「……神殿の庭園?あそこ、襲われた場所でしょ?」



「そうだけど、今調査のために警備が多いでしょ?今よ!」



私は『安全である』ということを強調して、リイナを説得する。

快く思ってはいないようだけれど、一理理解はいただけたようだ。


と言うより、リイナも私の看病(?)と言う名の名目で、室内に閉じこもっていたから、少し飽きてきていたのだろう。


心が揺れていた。



「……そこまで言うなら」



よしっ!これで外に出られるわ!


リイナには悪いけれど、庭園に行くと言うのは口実、誰の目にも触れないところから

あとは、こっそり神殿の外に出ればいい。


その足で、心当たりを探しにいけばいい。







なんて……思っていたのだけれど……。








「あ……一緒に来るのね。」



「もちろん」



リイナは私にくっついて、庭園の外にまでついてきた。

一人で散歩はさせてくれないらしい。


しかもこのくっついて……というのは比喩でもなんでもなく……



「リイナ……そんなにべったりしなくても……大丈夫よ?」



腕を絡めて体を私に引っ付かせているのだ。



「気にしないで!」



なんて、リイナは言うけれど、歩くの邪魔……そして暑い。

ドレスじゃなくて、神殿で借りた神官の服(今度は女性用)でよかったわ。

じゃなかったら今頃転んでたわ……


けど困ったな……このままだと本当にシンプルに庭園散歩して外出終了してしまう。


なんとか一人にならないと。



「あのね、危険なのはあなたの方なのよ?リイナは中に戻った方が……」



実際に危ないのはリイナの方だ。

不用意に外を歩かない方がいいのは間違いない。


けれど……



「でも、それじゃあルナが倒れたら、支えるの?」



あんなことがあった後では、リイナはそれを許すのは嫌なようだ。



「一年たたないと何も起きないわよ」



「そういう悲しいこと言わないでよ」



あぁ、しまった。

リイナが落ち込んでしまった。


こうなってしまうと話が進まない。


別の方法を考えよう。


そうだ、シンプルな質問があるじゃない。



「リイナ……あなた忙しいでしょ?」



なんだかんだ、リイナは聖女になったのだ。

聖女になった後のスケジュールはかなり忙しいと聞いている。


だから、私に付き添ってる暇なんかないはず……!



「ううん、スケジュール空っぽになって、やることなくなっちゃった。」



と、思ったのだけれど、リイナに笑顔でそう言われてしまった。



「そうなの…」



今度は私が落ち込む。


よく考えたらそうよね、忙しかったら、どんな事情があれど、一週間も私につきっきり、部屋に篭りっきりで、看病したりしないわよね……あはは……



詰んだわ。



どうしよう私はどうやって一人になろう……



「あ、ルナ、見てみて、あの花綺麗だよ!」



いつになったら、私は一人になれるのだろう……

まさか、もう死ぬまで二度と一人の時間は訪れないのかしら。


軽く絶望。



しかし、天からの助けは、案外早く訪れた。



「やっと見つけた。何してるんだ二人とも」



誰かに声をかけられた。


私たちは二人同時に後ろを振り返ると、そこにいたのはフィリックだった。



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