第17話 解決策が見つかるまで……



「クロウ……それほんと?」



「あぁ、1人だけだけど……全くそれと同じアザのある人とあったことがある。」



意外ね。

神父も知らない呪いなのに、クロウは知ってるなんて……不思議なこともあるものね。


それは私だけではなく、この場にいた全員が同じ気持ちだったらしい。

一番付き合いの長いフィリックすらそうだったようで、クロウに質問を投げかける。



「いつ頃、どこで見た?」



「子供の頃、君たちに出会うよりも前だよ。」



「その方の名前は?」



「さて……大昔のことだから……でも、皇宮の関係者じゃないかな……紋章つけてたし。」



「よくそんな昔のこと覚えてたな。」



フィリックはクロウの答えにそう感心する。

顎に片手を当てて、天井を見ながら必死に答えていたのを思い返すと、クロウ本人も、あまりにも昔の話だからか、思い出すのに苦労している様子だった。


そんなクロウに食いつくようにリイナは質問する。



「その人、どうなったの!?」



「えーっと……確か……半年後に症状が出始めて、一年後心臓麻痺で……」



「ちょ……クロウ!」



それは事実なのだけれど、心臓麻痺は言わなくてよかったのでは?

あぁ……ほら、リイナちょっと涙目になってる。


それを見てなのかはわからないけれど、フィリックはこんなことを言い出した。



「皇室に関係あるなら…何か治療の記録が残ってるかもな。ちょうどこの後用事があったんだ、少しし食べてみる。」



さすが公爵家ともなると、そういうことに顔は効くわね。

具体的な提案が来て下を巻いていると、それに待ったをかけたのは神父だった。



「そう簡単に教えてもらえるかな……」



「ルナのことは王侯貴族にはもう知られてるし、説明すれば協力してくれるはずだ。」



「だといいですけど……でも、仮に資料があったとて、その方死んでるんでしょ?治療の記録はあっても、呪いを解く方法まではわからないのでは?」



「それでもデータはあるに越したことはない。」



フィリックは、やらない理由はない、とでもいうように早速行動に移すため、その言葉を言い終えると、くるりと翻し部屋を出て言った。


神父はそれを見ながらヤレヤレとでもいうように方をすくめる。



「私としては張本人を捕まえて、なんの呪いをかけたのか聞くのが手っ取り早いように思うけど……」



「それは分かってるんだよ神父、簡単に言わないでくれ。その本人を見つけるのに今どれだけ苦労してると……」



「居場所、まだわからないの?誰か、あの子の後を追ってるとか……」



神父とクロウの話を聞いて不安を見せるリイナ。

それに取り繕えれば良かったのだろうけど……それに見合う情報はないのだろう。

クロウは首を横に振る。



「いいや、見失った。もちろん総力を上げて探してはいるが……あの子、姿を消す魔法が使えたみたいでね。」



「じゃあ、追いかけるなんて無理じゃ……」



「名前がわかれば、住民登録書を確認して、調べることもできるけど……」



その言葉を聞いてハッとする。


そうよ、別に探そうとする必要もないじゃない。


普通に考えて、仕事を終わったら家に帰るんだもの!

そこで待ち伏せすればいいじゃない!



「だったら、あの子の家を探しましょう!」



私はガッツポーズを作ってそう言った。



「ルナ、思いつきで軽く言うもんじゃないよ」



「それとも、心当たりでもあるのかい?」



「なんとなくね!」



これぞ原作者特権!


黒幕は変わってもロベリアの行動は変わらなかったし、行動は変わっても住む場所までは変わっていないはず。


そして私はその場所を把握できている!

なんだ、思った以上に問題解決は早くできるじゃない。



「早速……」



私はベッドから降りようと体を動かすと、リイナの指が額に当てられる。

人間、これをされると意外に身動きが取れない。



「……リイナ?」



「ダメだよ」



「何が?」



「あの子のこと探しに行くつもりでしょ?ダメだよ、呪いかかったんだから」



「……まぁ、確かにそうだけど、もう元気に……」



「何が起きるかわからないでしょ?絶対安静、ベッドから起きちゃダメ!」




かなり真剣な顔をしている。

これは………本気だ。


しかし、これは困る。



「……あの……別に病気じゃないし……安静にしてても変わらないし、今元気……」




っていうか、呪いの性質上、日が経っていくごとに調子悪くなるから(といってもリオスに苦痛取り除いてもらってるから一年後までなんもないけど!)今が一番元気……



「とにかくだめ!呪いが解けるまでの間は絶対安静!」



この時のリイナの発言には気迫があり、誰も何もいうことができなかった。

圧倒された私は思わず『はい』なんて了承をしてしまったのだけど……


そのせいで、この瞬間から、リイナの過保護が始まった。


これが一週間前の出来事である。


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