第13話 一か八か聖女を守れ


その私の声に反応して周りのザワザワという声がさらに大きくなった。


そして、ロベリアは……

こちらに向かって、いや、厳密に言えばリイナに向かって、レッドカーペットの上を風の方に早く、まっすぐ走る。



誰も魔女を止められない。



代わりに立ち止まったのは……



「ルナ?」



リイナだった。


リイナは私の声に反応して、立ち止まり振り返ってしまったのだ。



「リイナは止まらないで!逃げて!」



私は大声で叫ぶ。


しかし、人間急にそんなことを言われても、理解できない状況に陥ると動けなくなるのである。



この状況はまずい。



騎士は滝の側には誰も立ち入れないと鷹を括り入り口にしか警備を配置していない。


アモルト神父は、一番魔女から遠い位置にいたせいで、動きが遅れていた。


神官たちは魔女を止めようと手を伸ばすが、早すぎて誰も体に触れられない。

通せんぼうした頃には、すでにその場所を通過している。


唯一近くにいて状況把握がすぐにできて、動けたのはフィリックだったが、

いかんせん二列目とは言え奥の方…こんな騒ぎになって列が崩れてしまっては、人をかき分けてレッドカーペットに出てくるのに時間がかかってしまう。



すでに魔女は3列目までに差し迫っている。



ここからでもわかる。彼女ロベリアの手には、もう魔法陣が現れている。



どうする……このままでは、立ち止まっているリイナに……



「いいえ、諦めちゃダメ」



動いている対象物を止めようとするからうまくいかないのだ。


最終目的は優先すべきはリイナの命!!


この状況下でリイナを助けることができる方法は……ただ一つ!



私はその場から走り出した。

今からなら……ギリギリ間に合うはずだ。


魔女に向かってではない、リイナに向かってだ。



「リイナッ!!」




ドンっ




私はリイナを思いっきり突き飛ばし、レッドカーペットから外に出した。


直後……



ばちんっ



という音と共に、魔女が私にぶつかってきた。

その勢いで、私は倒れ、頭を思いっき地面にりぶつけた。



「いっ」



そのせいだろうか……目の前が霞んでいき、耳も遠くなってきた。



そのわずかな意識の中で



「子供を捕えろ!!」



「逃げたぞ追え!」



という、声と



「ルナ……?ルナ……!!」



駆け寄ってきたのか、リイナの声が聞こえてきて、安心した。


その瞬間、私の意識は途切れてしまったのった。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





ふと目を開けると、暗闇の空間にいた。


どこからも光が入らないのか、夜よりも暗く、何の音も聞こえず、なのにかなり広い不思議な空間。


でも、現実世界ではあり得ないこの空間に、私は覚えがあった。


もしや……と思ったのだけれど



「ご無沙汰してます」



その声は、想像していたものと違った。

ここにいるはずの人物の声よりも、高い声だったのだから。


私は声のする方に顔を向けると……やはり想定しない人物がそこにはいた。


金髪の男の子だ……10歳くらいの……。



「誰……」



私は顔を傾ける。

こんな人物は、この物語に登場させてないはずなのだけれど……。



「忘れました?僕ですよ。リオスです」



「え……リオス!?どうしたのその姿……なんで、こんなに縮んじゃったの!?」



リオスは17〜19歳くらいの外見で、実際私が前に会った時はまさにそんな感じの華奢な青年だった。


これはこれで可愛いけれど、ショタっ子ではないはずなのに。


私は思わず頭を撫でるが、その手を振り払われてしまう。

お気に召さなかったようだ。


リオスと名乗る子供は、金髪の髪をぱんぱんと埃を払うようにパンパンと叩くと、リオスは口を開いた。



「そもそも外見年齢が実年齢じゃありませんしね、あなたがそうやって設定したハズで外見がすけど?」



「そうだけど……子供の姿になるような設定はしてないわ。」



「まぁ……あれですね……力消耗が体現されたのか、運命を捻じ曲げようとしたペナルティーのせいなのか、見た目が幼くなってしまいました。」



「ペナルティー?いったい何をしたのよ?」



彼が何をしたのか、皆目見当もつかなかった私はそう質問した。


リオスは少し考えると、言葉選びに悩んだようで、いきなりは答えずこう返された。



「どこまで覚えてます?」



「どこまでって……リイナを助けて……頭打って……」



そうだ、ロベリアがリイナに接触して呪いをかけようとしてたから、私がリイナを突き飛ばしたんだ。


でも、私は避けられなくて、ロベリアと接触して、ロベリアの手には……


そこまで思い出してゾッそする。


慌てて自分の体を確認すると、自分の左腕……ロベリアに触られた箇所に、瑠璃蝶々の形のアザが浮かんでいた……。


それは、呪いをかけられた証拠だった。

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