第14話 神様との再会



「……」



色々全てのことを察した私はリオスを見る。

ペナルティーを食らうほど、まずいことなんて……これをなんとかしようとしたこと以外思いつかない。


自分のせいでこのような姿になってしまったのか



「まあお気になさらず、結局なんのお役には立てませんでしたから。それに、姿形変わっても、聖女としかお話しできませんし。力も使い切ったわけではありませんから。」



あっけらかんとして、笑顔でそういうリオス。

それが本心なのかはわからないけれど、その笑顔を見れて私は少しホッとした。


そうなると、一つ気になる事がある



「そうだ、リイナは?」



身を挺して守ったいとこ、気絶する前に声は聞こえたけど、その後に魔女に何かされていないという保証はないからだ。


私はリオスの返事が来るまでのコンマ1秒を、私は祈るようにまった。



「リイナは無事です。あなたが助けたおかげですね。魔女はリイナに呪いをかけるのに失敗したと分かったら、すぐに神殿を出て行きました。」



それを聞いて、私は心の底から安心してホッとため息をついた。

そんな私を見て、リオスは眉を顰める。



「人のことを心配している場合ですか?今はあなた自身ことを心配するべきです。なぜあんな無茶を?」



「リイナを守るには、あれしかなかったから。勢いづいた物体は、急には止まれない。目の前の対象物が突然変わっても、方向転換も急ブレーキも効かないと思って……かけてみた。」



「それであなたが身代わりになったら世話ないじゃないですか。せっかく前世の夢叶えてあげたのに……」



そう言いながら、リオスは不貞腐れる。

ポーカーフェイスなイメージがあったのだけれど、幼くなったせいか結構表情がくるくる変わって面白い。


口に出して言葉にすると怒られそうだから、心の中にしまっておこう。



「ねぇ……私…もしかして死んじゃった?だからまたリオスと話ができてるの?」


「いいえ、僕と話せてるのは、おそらく治療のために飲まされた聖水のおかげでしょう。命に別状はありません、今はですけど。」



「このままでは物語でリイナがそうだったように……一年後あなたは呪いで死にます。」


「呪いを解いてもらうしか、方法はないってこと……」


「そういうことです。」


「ロベリアはどこ?黒幕は誰!?」


「現在の居場所は分かりません。」


神様なのに、どうして何もわからないの!?


本当ならそんな言葉が出ただろう。でも作者の私だからわかる。

リオスは神様だけど、全知全能じゃない。


少なくとも特定個人の居場所を特定したり、追跡したりできる能力は持ち合わせていない。


だから、責めることはできないのだ。



「どうしてこんなことになったの?私は黒幕をおりたのに、何でリイナは魔女に狙われたの?作者の私が想定できないことばっか起きてるのはどうして?」



「考えられる可能性としては…、あなた以外にこの物語の内容を知る第3者がいて、あなたの役割を奪った……もしくは物語が改変されたか……」



なるほど。

物語が改変されたというのはあまりないけれど、

この物語のことを知る、もう一人別の誰かが転生している可能性については、転生ものの作品の中では最近流行りの設定ではある。


それが正解であるなら、原作と違う動きをしている人間を探せば早いという結論になるけれど……



「……でも、それはありえないわ。」



「なぜです?」



「漫画家になる夢は追ってたけど、デビューすらできなかった。いつかプロとしてこの作品を描くのが夢だったから。物語自体は完結させてるけど、イベントで配布したり、ネットにもアップしてないから私以外誰も読んだことはないの。」



完結した物語はパソコンのテキストソフトに、設定の走り書きは鍵付きノートに。

だから、誰の目に触れることもない。

何も知らない転生者はいたとしても、物語の道筋を知らない転生者が何か道筋を変えられるとは思わない。



「誰かに話した可能性は?もしくは遺品整理やハッキングで見られる可能性は?」



可能性を切り捨ててしまうのは危険だと思ったのか、リオスは可能性を提示する。

でも、やはりそれもない。



「子供の頃2…3人に話したことはある、でも向こうは覚えてないと思う。パソコンはパスワードかかってるし、遺品整理してくれる人もいないから…。っていうか、ハッキングされてても素人の作品を記憶に留めないと思う」



「となると、今推定できることは何もありませんね。」



リオスは口に手を当ててそういった。



「聖女という立ち位置は皆が狙っているので、単にあなた以外にもリイナを狙う人がいた…?そういうことと納得しましょう。」



「私さえ役を降りればいいなんて……考えが甘かったわ。」



「後悔したところで、現実は変わりません。今後のことを考えましょう。」



「今後?」



「ひとまず、リイナが殺されてしまっては、変わりはいるとはいえ僕としても不都合です。彼女が襲われないように監視をしましょう。」



そういうと、リオスは透けた透明の白い鳥を私広げた自分の手のひらに表した。



「その鳥が、リイナを守ってくれるの?」



「残念ながら、そこまでの力はありません。できることは本当にリイナの周りの監視程度です。でも、知らないうちに襲われるよりはマシでしょう?危険になれば、あなたにそれを伝えます。これで彼女は危険を避けることはできルはずです。」



確かに……神様が見守ってくれているだけでもありがたい。

本当は、結界でも張ってくれるとありがたいのだけれど……私のために力を使ってしまったリオスに、これ以上を求めることはできない。


これでリイナの件についてはひとまず安心ということにしよう。



「もう一つ、あなたの体のことです。」



「体って……呪いは解けなかったんでしょ?」



「はい。しかし、苦痛を取り除くことはできました。本来なら一年かけてじっくり体を蝕み、苦痛を伴い動けなくなるのですが、その心配はありません、死ぬその瞬間まで、あなたは動くことができます。」



これは助かる。


体の不調で、黒幕やロベリアのことを調べられなくなってベッドの中なんて冗談じゃないと思っていたところだったから。

リイナみたいに、苦痛に耐えられる自信はなかったし。


ただ……全く影響なしというわけにもいかないようだ。



「終盤血を吐くことはあるかもしれませんが、それ以上のことはありませんのでご安心を」



笑顔でサラッとどえらいこと言った。



「大丈夫です、痛くもないし苦しくもないし、倒れることもありませんから。ただし、一年後の今日この時間になったら必ず呪いが発動し確実に死にますからね。」



だからもうちょっとなんか……いい方ないの?

なんて、ツッコミは心の中だけに止めた。



「僕が思いつくことで、できることはさせていただきましたが、他には何かありますか?」



「大丈夫、十分よ。ありがとうリオス」



「僕も、あなたを救う方法を、黒幕や魔女のこともっと調べますから。運命にも呪いにも、負けないでくださいね。」



リオスにそう声をかけられた直後、私の体の周りに光の泡が現れ、真っ暗だった空間が眩しいくらいに明るくなった。




さぁ、現実に戻ろう。



そして、黒幕と魔女を捕まえて、私たちの平穏を取り戻そう



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